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2016年9月26日

Apple Payは「敵を欺くトロイの木馬」、

清澤のコメント;2016年と言えばすでに3年も前。(本日は2019.12,23です。)当時の記事をアップ寸前で眠らせていたことになる。2019年に消費税値上げとともに、日本でも大幅にカード決済が広まったとされるが、果たしてこの記事の内容は生きていたのだろうか?

 --記事の採録です---

Apple Payは「敵を欺くトロイの木馬」、 どうなる日本のガラパゴス決済

岡部 一詩=日経コンピュータ 2016/09/26 日経コンピュータ

 世界中のアップルファンが「何だそれは?」と疑問に思うなか、日本人だけは「ついに来たか」と心躍らせた瞬間だったのではないだろうか。2016年9月7日(米国時間)に開かれた米アップルの製品発表イベント。「iPhone 7/iPhone 7 Plus」に搭載した10の新機能を力説していたフィル・シラー上級副社長が8番目に紹介したのが、電子決済サービス「Apple Pay」の日本上陸と「FeliCa」の採用である。

出所:磯 修

 多くのメディアが報じるように、今回、アップルは日本市場に対して格別の配慮をみせた。日本出荷分端末にはFeliCaチップを搭載、NTTドコモの「iD」やJCBなどが推進する「QUICPay」が使える店舗ならばどこでもApple Payを利用できるようにした。日本の店舗は、「iPhone 6」以降の機種が搭載してきたNFC(近距離無線通信)Type-A/B方式のリーダー端末を用意する必要はなく、既存の仕組みがそのまま使える。なにより、Suica利用への手厚いサポートは驚くべきものだった。

10年ぶりに外れたiPhoneの「蓋」

 アップルは近年、世界的にほとんど同じモデルの端末を一貫生産する方針を強めてきた。にもかかわらず異例の対応に出ざるを得なかったのは、iPhone販売の世界的な減速にあるとされる。依然としてiPhoneのシェアが高い日本を絶対防衛ラインとして、ガラパゴスそのものと言ってよい日本のモバイル決済市場にすり寄った格好だ。

 「日本は、紙幣から電子マネーへのシフトにはある程度成功した。ただし、モバイル決済は期待されながらもキャズム(初期市場からメインストリーム市場への移行する過程にある深い溝)は越えられていない段階」と、野村総合研究所 IT基盤イノベーション本部の藤吉栄二上級研究員は説明する。

 足踏みを余儀なくされてきた要因の一つは、iPhoneにあったと筆者は思っている。NTTドコモが「おサイフケータイ」を世に送り出したのは2004年のこと。当時はフィーチャーフォンの時代だ。ところが2008年にはモバイル決済機能を持たないiPhoneが上陸。大量のユーザーを魅了し、相当数存在したであろうモバイル決済への潜在ニーズは、これによって蓋をされた格好になった。

 今回、約10年ぶりにこの蓋が外されたことは、キャッシュレス社会を目指す日本にとって多かれ少なかれ追い風になるのは確かだ。いちユーザーの観点でも利便性が高まるのは間違いなく、喜ばしい出来事である。

 ただし、新iPhoneのFeliCa採用はアップルの窮余の策として片付けるのは早計かもしれない。ここからは思考実験の色合いが濃くなるが、日本のカード業界にとっては「トロイの木馬」のような存在になり得るのではないかと著者は考えている。

(岡部 一詩=日経コンピュータ 2016/09/26 日経コンピュータ)

 トロイの木馬とは、ギリシャ神話に出てくる兵器である。ギリシャ軍は都市トロイを攻略するために、内部に兵士を潜ませた巨大な木馬を作って戦場に置き去りにした。勝利を確信したトロイが戦利品として市内に木馬を運び込んだところ、中のギリシャ兵が躍り出て奇襲に成功したという。

 日本版Apple Payは日本にとって、良いことづくめに見える。それはカード業界にとっても同じだ。クレジット決済が増えれば、カード会社の収入は増える。もちろん、アップルがどれだけの手数料をカード発行事業者(イシュア)に請求するかにもよるが、基本的に悪い話ではなさそうだ。

 ところが、Apple Payが奪ってしまいそうな収益もある。それは、カード事業者の新たな収益源と期待を集めているCLO(Card Linked Offer)だ。クレジットカードの利用履歴などを分析し、提携企業のクーポンなどを利用者に最適配信、決済時に利用できるようにする仕組みだ。

 iPhoneは以前からウォレットアプリを搭載しており、ホットペッパーグルメのクーポンなどが管理できるようになっている。Apple Payと組み合わせれば、決済とクーポンの距離が一気に縮まる。

 アップルは、Apple Payによる決済の詳細を見ないと公称しているようなので、分析に基づいたターゲティングには手が出しにくいかもしれない。ただし、クーポン利用の利便性はぐんと高まるはずだ。果たしてカード会社のCLOサービスが、利便性の領域でアップルを超えられるか。

 さらに劇的な展開を予測する業界関係者もいる。Apple Payの提供によってアップルが、クレジットカード会社を通さない決済基盤を独自に構築できるようになるのではないか、というものだ。

 前述のように、アップルは決済情報の詳細を入手しない立場を採っているが、将来的にどうなるかは分からない。決済情報を大量に集めて分析できるようになれば、カード会社の力を借りることなく個人の信用力を見極められるようになる。加盟店さえ集められれば、決済の仕組みを独自に作り上げることは不可能ではないように思える。

 CLOや独自決済基盤の領域では、今秋の日本上陸が見込まれている「Android Pay」を提供する米グーグルも同様の取り組みが可能だ。同社はAndroid Payで利用者の行動に関するデータを収集、分析するとしており、アップルよりもさらに可能性は高い。

ガラパゴスの壁は既に越えた

 今回アップルが日本に特別対応したのは、Apple Payの提供によってiPhone 7の魅力を高め、日本のユーザーを囲い込むことを優先した結果とみるのが現実的だろう。ただし一度参入を果たしてしまえば、次なる打ち手が視界に入ってくるはずだ。

 アップルは既に、FeliCaを採用したApple Payという“木馬”によってガラパゴスの壁を越えてみせた。その中から、次は何を送り出すのか。日本で発展してきたエコシステムの破壊者になり得る可能性は十分にある。

Categorised in: ご近所の話題