お問い合わせ

03-5677-3930初診受付

ブログ

2021年4月3日

12757:眼圧正常の緑内障は認知症高リスク:研究紹介

清澤のコメント:この研究は、眼圧に依存しない緑内障患者における神経細胞の脆弱性を示唆しているのかもしれません。現在、緑内障治療は眼圧を下げることに向かっており、一部の薬剤が眼圧下降作用に合わせて神経保護作用を謡っているのみです。眼科領域では我々神経眼科医にとっては残念なことに、緑内障が神経眼科領域に含まれるべき緑内障性視神経障害としてではなく、独立した疾患として扱われています。今後の研究の進歩に注目いたしましょう。メディカルトリビューンの解りやすい記事と、原論文の抄録の日本語訳を紹介しましょう。

眼圧正常の緑内障は認知症高リスク

豪・レジストリ研究

 2021年04月02日 05:05

イメージ画像

 オーストラリア・Flinders UniversityのSean Mullany氏らは、同国の緑内障レジストリ患者を対象とした認知症スクリーニングを実施。高眼圧緑内障(HTG)よりも正常眼圧緑内障(NTG)で認知症との強い関連が示されたと、Br J Ophthalmol2021年3月29日オンライン版)に報告した。

NTG例とHTG例にランダム抽出し前向きにスクリーニング

 これまで、原発性開放隅角緑内障(POAG)と認知症の関連については複数の研究で示されているが、相反する報告も存在する。最近のメタ解析ではPOAGがアルツハイマー病(AD)のリスクを上昇させることが示された(相対リスク1.17、95%CI 1.00~1.37、P<0.001、Acta Ophthalmol 2019; 97: 665-671)。しかし、解析に組み入れられた個々の研究を見ると、ADとの関連が得られたのは、NTGが圧倒的に多いアジアでの研究(台湾、日本)や、NTG患者を多く含む欧州での研究であった。これらの点を踏まえ、Mullany氏らは緑内障と認知症の関連はNTGに特有のものであるとの仮説を立てた。

 同氏らはこの仮説を検証するために、オーストラリアとニュージーランドで進行緑内障患者を登録したレジストリから、年齢と性を一致させた65歳以上のNTG患者およびHTG患者をランダムに抽出。モントリオール認知機能評価の電話版(T-MoCA)による認知症スクリーニングを実施し、それぞれの認知症有病率を比較する症例対照研究を行った。T-MoCAは22点満点で、11点未満を認知症と定義した。

HTG群に対するNTG群の認知症OR2.2

 597例を抽出し、そのうち290例(NTG群144例、HTG群146例)が認知症検査を受けた。検査前の患者背景および眼関連の変数に両群で差はなかった。

 認知症の有病率は、HTG群よりNTG群で有意に高かった〔オッズ比(OR)2.2、95%CI 1.1~6.7、P=0.030〕。NTGとT-MoCAスコアの低さとの間にも関連が認められたが、有意ではなかった(P=0.108)。

 脳卒中、高血圧、糖尿病の既往や喫煙歴に関連した交絡因子を調整後の多変量解析でも、NTGと認知症の有意な関連は維持された(OR 2.6、95%CI 1.1~6.7、P=0.034)。

同研究の強みとして、まずランダム抽出によるマッチングで両群の患者背景を一致させたことが挙げられる。また、後ろ向きレジストリ研究では認知症が過小診断されている恐れがあるため、認知症の前向き評価を行っており、検査には視覚的解釈を要する項目を含まないT-MoCAを用いて、視力低下に関連した交絡因子を排除している。さらに、290例のうち287例が欧州系であり、アジア系だけでなく欧州系においてもNTGと認知症が関連することを示したといえる。一方、認知症の症型ごとの検討は行われなかった。

Mullany氏らは「今回の結果は、HTGよりもNTGの方が認知症との関連が強いという仮説を支持するものである。NTGと認知症の関係をより明確にするには、さらなる検証が必要である」と結んでいる。

原著のアブストラクト訳:

臨床科学 正常眼圧緑内障は認知障害に関連している 

  1. http://orcid.org/0000-0002-0328-6011ショーン・マラニー他 フリンダース大学眼科,アデレード,SA 5042,オーストラリア; seanmullany@gmail.com

アブストラクト:

背景/目的:最近の研究は正常眼圧緑内障(NTG)と認知症の関連を示唆している。本研究は、オーストラリアの緑内障病登録簿内の認知スクリーニングを用いて、高眼圧緑内障(HTG)よりも認知障害がNTGと強く関連しているかどうかを調べた。

メソッド:著者らは、オーストラリアおよびニュージーランドの高度な緑内障登録簿から無作為にサンプリングされた290人の年齢一致および性に一致するNTG参加者と65歳以上のHTGコントロールを含む症例対照断面認知スクリーニングを完了した。モントリオール認知評価(T-MoCA)の電話版を使用して認知スクリーニングを行った。T-MoCAは視覚解釈を必要とする部分を省略し、視覚障害者の視力低下に関連する交絡因子を考慮する。認知障害は、T-MoCAスコアが11/22未満で定義した。所定の閾値と絶対スクリーニングスコアを用いてNTGとHTG参加者の間で認知を比較した。

結果:合計290人の参加者で認知評価を完了した。ベースラインではNTG(n=144)とHTG(n=146)コホート人口統計や眼パラメータに違いは無かった。認知障害は、HTGコホートよりもNTGコホートで最も一般的であった(OR=2.2;95%CI 1.1〜6.7、p=0.030)。HTGコホートと比較すると、NTGコホートの低絶対T-MoCAスコアの間にも線形傾向が認められたが、この関連は統計的に有意ではなかった(p=0.108)。

結論:本研究は、NTGの状態と認知不良との関連を示し、NTGと認知症の間に疾患関連と共有病態学的特徴が存在するという仮説を支持した。

Categorised in: 緑内障