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2019年3月12日

10530:失明原因第1位の「緑内障」 小さな傷口ですむ眼への負担が少ない手術法とは?:アエラ記事紹介


清澤のコメント:3月になり、緑内障週間がやってきました。それを見据えた優れた記事がアエラドットに掲載されました。話しているのは相原先生と富田先生です。最近感ずるのですが、各大学とも緑内障治療に力を入れていて、どこも緑内障専門外来は充実しています。東北大、東大、慈恵医大、北里大など緑内障専門医が主任教授になった大学も増えています。緑内障と言えば点眼治療、其れで抑えきれなくなって手術といえば、線維柱体切除術という時代ではなくなってきたようです。

近藤昭彦2019.3.10 07:00週刊朝日#ヘルスから抄出

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 毎年3月には世界緑内障週間がある。国内では公共施設が緑色にライトアップされるなど、各地域で緑内障の啓発イベントが実施されている。2019年は3月10日~16日が世界緑内障週間となっている。

 緑内障は大きく分けて二つのタイプがあり、どちらも薬物療法が効かなければ、より治療効果を上げるために外科的手術が検討される。最近は、小さな傷口ですみ、眼への負担が少ない手術法が普及してきた。

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 緑内障は日本人の失明原因第1位で、大きく二つのタイプに分けられる。眼の中は房水という液体で満たされており、房水が眼球を内側から押す力が眼圧だ。線維柱帯と呼ばれる場所が目詰まりを起こし、うまく房水が流出されずに眼圧が上昇するのが開放隅角緑内障。一方、隅角が塞がれ房水の流出が妨げられ眼圧が上昇するのが閉塞隅角緑内障である。

 どちらの緑内障でも、生涯、健康な視野を維持するために眼圧を下げることが治療の中心になる。点眼薬による薬物療法などで進行のスピードを抑えられるが、どのような治療でも進行そのものを止めることはできないのが現状だ。

 東京大学病院眼科教授の相原一医師は言う。

「開放隅角緑内障なら点眼薬による薬物療法が中心になりますが、副作用で十分に薬が使えない、薬を最大限に(通常3剤まで)使っても進行を抑えられない場合があります。進行を抑制できても、生涯、視野を維持するのは難しいと判断される場合は、手術をおすすめすることになります」

 また、東邦大学医療センター大橋病院眼科教授の富田剛司医師はこう話す。

「閉塞隅角緑内障は薬物療法では眼圧の十分な低下は期待できません。そのため、基本的に治療の最初から手術を検討します」

 開放隅角でも、閉塞隅角でも、手術方法は同じである。眼圧低下の効果が最も高い手術は、線維柱帯切除術だ。眼圧低下を狙う手術はほかに、線維柱帯切開術、チューブシャント手術、レーザー治療、白内障があれば水晶体摘出などがあり、症状に合わせて検討される。

■眼圧低下効果が高い線維柱帯切除術
 線維柱帯切除術は、線維柱帯の一部を切除して小さな穴をあけバイパスをつくり、結膜の下に、いわば水たまりのようなろ過胞をつくる。房水は毛様体でつくられ、線維柱帯というフィルターを通り、シュレム管から排水された後に静脈に流れ込む。房水の排水経路が確保されれば、眼圧低下が期待できる。

「線維柱帯切除術は十分な眼圧低下が期待できます。眼圧は10~20‌ミリメートル‌Hgが正常とされており、下げすぎるのも危険ですが、一桁(9以下)をねらうことも可能です」(相原医師)

 ただし、線維柱帯切除術は術後の管理が難しい。手術の結果、本来は房水と接することのない房水の排出先周辺(結膜)では、房水を異物としてとらえ炎症が起こる。これが癒着を引き起こし、バイパスが塞がれてろ過胞が機能せず眼圧を下げられなくなるおそれがある。そこで癒着を防ぐため「できた傷を治りにくくするような」点眼による微妙な薬物療法が求められる。

 チューブシャント手術は、房水の通り道として極細のチューブや、房水の排出先を広く確保するプレートを埋め込む。緑内障のインプラント手術とも呼ばれ、用いるインプラントにより大きく2種類に分けられる。

 プレートなしインプラントは、線維柱帯切除術と同様の成績で安全性は高いが、費用が線維柱帯切除術の約1・5倍かかる。一方、プレート付きインプラントは、費用が約2倍かかり、眼圧が下がりすぎることや、チューブで角膜を傷つけやすいともいわれている。

「まず線維柱帯切除術やプレートなしインプラント手術をおこない、それでも生涯、視野を維持できるだけの眼圧低下が得られない場合は再手術もあり得ます。手術を繰り返し、手術に伴う眼の障害などでこれ以上通常の手術は難しい場合に、プレート付きインプラントのチューブシャント手術を検討します」(富田医師)

 富田医師は開放隅角緑内障の薬物療法と絡め、次のように述べている。

「薬物療法で十分な眼圧低下が得られず、使用する点眼薬が増えて、点眼のわずらわしさから使用をやめてしまうケースもあります。初期から中期なら、薬を減らすために線維柱帯切開術をおこなうこともあります」
■小さな傷ですむ手術MIGSが普及
 線維柱帯切除術では、線維柱帯に「穴をあける」が、この切開術では「眼の外から」結膜(白眼)を切り、シュレム管を露出させて、線維柱帯に「切れ目を入れる」。線維柱帯切除術と比べて眼圧低下の効果は低いが、合併症が少ない安全な手術である。さらに、MIGS(低侵襲緑内障手術)という、2ミリ程度のごく小さな角膜の傷だけですむ、「眼の中から」同様の線維柱帯切開をおこなう手術が、数年前から普及してきた。

 MIGSには、角膜の小さな傷口から器具を眼内に入れてシュレム管を切開する方法のほか、白内障手術との併用で、シュレム管にドレーンという極細のチューブを挿入する方法もある。

 線維柱帯切除術・切開術などでは手術時間が30~40分かかり、術後は入院が必要となるが、MIGSは小さな傷ですむうえ、手術も10分程度である。病院によっては日帰り手術も可能だ。

 ただし、MIGSにはまだ限界があり、それを相原医師が指摘する。
「MIGSを含む線維柱帯切開術は、眼圧を15‌ミリメートル‌Hgくらいまでしか下げられません。生涯、視野を確保するために10くらいまで下げる必要のある末期の緑内障の場合や、もともと眼圧が低めで、現状よりさらに下げることが難しい場合には向いていません」

 どのような手術でも眼圧が十分に下がらない場合、房水をつくる毛様体をレーザーで焼く手術もある。

「房水がつくられなければ眼圧が下がる、という効果をねらった手術です。ただし、焼きすぎると眼圧が下がりすぎて、眼を傷めることになります。手術の効果を確認しながら少しずつ焼いていきます」(相原医師)

 手術で房水の排水が確保されれば、開放隅角緑内障はもちろん、閉塞隅角緑内障であっても、術後の眼圧によっては、薬物療法を続けることもある。
「有効で安全な手術が普及しています。適切な時期に手術を受けられるように、治療を継続することが重要です」(富田医師)


◯東京大学病院眼科教授 相原 一医師
◯東邦大学医療センター大橋病院眼科教授 富田剛司医師
(文/近藤昭彦)
※週刊朝日3月8日号から

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Categorised in: 緑内障