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2021年5月6日

12839:中枢性神経麻痺性角膜症の原因:眼所見と治療内容に関する検討

清澤のコメント:この著者も抄録内で述べているように、私は三叉神経に含まれる角膜栄養神経成分が障害されることで角膜障害が起きるものを中枢神経麻痺性角膜炎と呼ぶのかと思っていた。(清澤注1:神経栄養性角膜炎neurotrophic keratitisとの差異?)。聴神経腫瘍では内耳道で腫瘍が顔面神経を圧迫するから顔面神経麻痺が起きやすいだろう。中枢神経麻痺性角膜炎には純粋な三叉神経麻痺以外の顔面神経麻痺例なども含めて考察してよいのだろうか?というのが素朴な疑問であった。しかし、角膜障害で脳および脳神経に神経障害を持つ物を調べたらその原因がこうで有ったというのであれば、これの結論は是でよいのかもしれない。(新着の日眼会誌から採録)

中枢性神経麻痺性角膜症の原因:眼所見と治療内容に関する検討 向井規子1), 福岡秀記2), 奥村峻大1), 吉川大和1), 横井則彦2), 池田恒彦1), 外園千恵2)1)大阪医科大学眼科学教室
2)京都府立医科大学眼科学教室

目 的:京都府立医科大学附属病院眼科を受診した角膜上皮・実質障害のうち,中枢性神経麻痺性角膜症と診断された症例について,その原因や角膜所見,治療経過について検討する.
対象と方法:2008年~2019年に中枢性神経麻痺性角膜症と診断した角膜上皮・実質障害の9例9眼を対象に,三叉神経麻痺の原因,初診時の角膜所見,治療,治癒後の角膜混濁残存の有無と位置,輪部角膜への表層性血管新生と結膜侵入の有無について比較し,検討した.
結 果:三叉神経麻痺の原因は聴神経腫瘍摘出5例,Wallenberg症候群2例 (清澤注2),神経鞘腫摘出1例,脳腫瘍に対するγナイフ治療1例であった.初診時の角膜所見は点状表層角膜症4例,角膜上皮欠損3例,壊死性角膜炎1例,角膜穿孔1例であった.治療は,点眼・軟膏加療のみが2例,点眼・軟膏加療と眼瞼手術の併用2例,涙点プラグと点眼加療2例,涙点プラグと治療用ソフトコンタクトレンズ(SCL)連続装用と点眼加療2例,アイパッチによる閉瞼加療1例であった.治癒後の角膜混濁は9例中5例に認められ,角膜中央部から耳側に多い傾向であった.また,輪部角膜への表層性血管新生と結膜侵入を9例中7例で認めた.
結 論:治療用SCLや涙点プラグなどの病期別の併用療法を用いて治癒した症例が多かった.上皮障害の治癒後に角膜中央部の混濁や,輪部角膜への結膜侵入を認める症例が多くあり,注意深い観察が必要である.(日眼会誌125:431-437,2021)

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清澤注1:神経栄養性角膜炎(ウィキペディア参照):神経栄養性角膜炎(NK)は、角膜感受性障、自発的角膜上皮破壊、角膜治癒の悪さ、角膜潰瘍の発症、融解、穿孔を引き起こす三叉神経の損傷によって引き起こされる角膜の変性疾患である。これは、一次感覚的役割に加えて、神経が栄養因子を供給し、組織代謝を調節することによって角膜の完全性を維持する役割を果たすためである。神経栄養性角膜炎は、ヨーロッパの10,000人に5人未満の推定有病率を有する稀な疾患に分類される。平均して、ヘルペス性角膜炎症例の6%がこの疾患に進化し、水痘帯状疱疹ウイルスによる角膜炎の症例のピークは12.8%であったと記録されている。診断、および特に神経栄養性角膜炎の治療は、この疾患の最も複雑で困難な局面であり、満足のいく治療アプローチとしてはまだ利用できない。

原因:角膜は血管を欠いており、人体の最も密に内インベートされた構造の一つである。角膜神経は角膜の解剖学的および機能的完全性を維持し、触覚、温度および痛みの感覚を伝達し、瞬目反射、創傷治癒および涙の産生および分泌において役割を果たす。ほとんどの角膜神経線維は、感覚の起源であり、三叉神経の眼科枝に由来する。 先天性または後天性の眼疾患および全身性疾患は、三叉神経の異なるレベルで病変を決定することができ、角膜の感受性の低下(低感覚)または喪失(麻酔)につながる可能性がある。角膜感受性の損失の最も一般的な原因は、ウイルス感染 (単純ヘルペスと眼窩ヘルペス帯状疱疹)、化学火傷、 物理的な傷害, 角膜手術, 脳神経外科手術局所薬の慢性的な使用, またはコンタクトレンズの慢性的な使用である。考えられる原因は、糖尿病、多発性硬化症またはハンセン病などの全身性疾患を含む。その他、頻度は低いが、この疾患の潜在的な原因は、神経腫、髄膜腫および動脈瘤などの頭蓋内腔占有病変であり、三叉神経を圧迫し、角膜感受性を低下させる可能性がある。逆に、この障害につながる可能性のある先天性の状態は非常にまれである。

清澤注2、Wallenberg症候群 ワレンベルグ症候群とは?延髄外側症候群のこと。

 ワレンベルグ症侯群は,後下小脳動脈(椎骨動脈系)の閉塞により,その領域の延髄外側が梗塞に陥ることで起きる。患側の顔面感覚障害,対側の体幹感覚障害,患側の軟口蓋・咽頭喉頭の運動麻痺と感覚障害,回転性めまい,運動失調,ホルネル症候群などの障害が生じる。

 顔面と体幹の感覚障害が同側でないのは,感覚線維の交叉する部位が感覚の種類により異なるためである。温痛覚は末梢神経から脊髄に入った後すぐ交叉し,反対側の脊髄・視床路を上行し,延髄外側部を通る。顔の知覚は三叉神経によるが,脳神経は交叉しないため患側と同側に感覚障害が起きる。

 なお位置覚・振動覚は脊髄に入った後そのまま後索を上行し,延髄で交叉する。その際,延髄内側へ近づくため,ワレンベルグ症候群では障害されない。また,運動神経の椎体交叉も内側のため,ワレンベルグ症候群では四肢の運動障害がないのが特徴である1)。:

Categorised in: 角膜疾患