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2018年11月8日

10250:オメガ3脂肪酸食は脂質メディエーター組成を変化させることによりアレルギー性結膜炎を改善する(原著論文)

オメガ3脂肪酸食は脂質メディエーター組成を変化させることによりアレルギー性結膜炎を改善する(原著論文)

眼科医清澤のコメント:学校法人 順天堂の プレスリリースが2018年11月5日発表され、頭書の内容が解説されています。サプリメントなどで唄われ易いDHAやEPA、α-リノレン酸といったオメガ3脂肪酸とは何か?それがどうアレルギー性結膜炎に効くのかが記事に解説されています。具体的データはこの記事では割愛します。


順天堂大学大学院医学研究科 生化学・細胞機能制御学の横溝岳彦教授と、眼科学の平形寿彬、松田 彰准教授らの研究グループは、魚油や亜麻仁油に豊富に含まれるDHAやEPA、α-リノレン酸といったオメガ3脂肪酸(*1)の食事摂取がアレルギー性結膜炎(花粉症)を改善させるメカニズムの解明に成功した。オメガ3脂肪酸摂取は、アレルギー症状を引き起こす多種の炎症性脂質メディエーター(*2)を結膜中から著しく減少させることにより、花粉によるアレルギー性結膜炎の症状を軽快させた。この研究結果は、罹患率の非常に高いアレルギー性結膜炎の新規予防・治療法の開発につながる成果。本研究は、米科学雑誌The FASEB Journalオンライン版(2018年11月1日)に発表された。
【本研究成果のポイント】
• 花粉症の結膜中には多様な症状を引き起こす多種の脂質メディエーターが存在する
• オメガ3脂肪酸を豊富に含む亜麻仁油の摂取は炎症性脂質メディエーターを減らし、アレルギー性結膜炎を改善する
• アレルギー性結膜炎(花粉症)の新規予防・治療法につながる研究成果

【背景】
アレルギー性結膜炎は花粉症患者に生じる眼の疾患。眼のかゆみによって生活の質が著しく低下する。
オメガ3脂肪酸はヒトの体内で作ることができないため食事から摂取する必要がある必須脂肪酸で、亜麻仁油(アマニ油)や魚油に多く含まれる。しかし、近年、摂取量は低下している。オメガ3脂肪酸の持つ抗炎症作用が注目され、喘息などのアレルギー疾患への効果が報告されているが、詳しいメカニズムは分かっていなかった。また、アレルギー性結膜炎に対するオメガ3脂肪酸の効果はこれまで検証されたことはなかった。
研究グループは、オメガ3脂肪酸を豊富に含む亜麻仁油を混ぜた餌をマウスに与え、アレルギー性結膜炎が改善するか検証した。

【内容】
まず、ブタクサ花粉を用いてアレルギー性結膜炎マウスモデルを作成した。オメガ3脂肪酸の食事効果を検証するために、マウスにはオメガ3脂肪酸を豊富に含む亜麻仁油を4%含有する餌を2か月間与えた。オメガ3脂肪酸を摂取させたマウスでは通常食を摂取したマウスと比較し、花粉によるアレルギー性結膜炎の症状が改善することを確認した。次に、オメガ3脂肪酸のアレルギー性結膜炎に対するメカニズムを検証するために、質量分析計を用いて結膜中の脂質メディエーターの網羅的な解析を行った。通常食摂取マウスではプロスタグランジン類やトロンボキサン、ロイコトリエンB4などのアレルギー炎症を引き起こす様々な炎症性脂質メディエーターが結膜中に検出された。一方、オメガ3脂肪酸を摂取したマウスの結膜中ではこれらの炎症性脂質メディエーター量が著しく減少し、オメガ3脂肪酸であるEPAの量が大きく増加していた 。
図1: オメガ3脂肪酸食によるアレルギー性結膜炎の改善
以上の結果から、1)アレルギー性結膜炎では様々な炎症性脂質メディエーターにより症状が引き起こされていること、2)オメガ3脂肪酸の摂取がアレルギー性結膜炎の改善に有効であること、が明らかとなった。

【今後の展開】
本研究は、アレルギー性結膜炎の結膜中の脂質メディエーターの網羅的な解析を実施した。さらに、オメガ3脂肪酸の摂取により結膜中の炎症性脂質メディエーターが減少することも(図2)世界で初めての報告。本研究グループが発見したオメガ3脂肪酸の経口摂取は安全性が高く、簡便に実践できるため、アレルギー性結膜炎の予防・改善や新規治療法として臨床応用が期待される。
図2: 本研究により明らかになったオメガ3脂肪酸によるアレルギー性結膜炎抑制のメカニズム
【用語解説】
*1 オメガ3脂肪酸
脂肪酸分子鎖を構成するカルボキシル基側の反対側の炭素分子をオメガ位と呼ぶ。オメガ位から数えて3番目の炭素結合部に二重結合を持つ脂肪酸をオメガ3脂肪酸と総称する。抗炎症作用で注目されているものは主に、二重結合を複数個有する多価不飽和脂肪酸であり、生体内で産生することのできない必須脂肪酸である。体表的なものに、αリノレン酸(ALA, C18:3)、エイコサペンタエン酸(EPA, C20:5)、ドコサヘキサエン酸(DHA, C22:6)がある。魚油や亜麻仁油、えごま油などに豊富に含まれる一方、肉類には少ない。

*2 炎症性脂質メディエーター
生体内で産生され、産生細胞の近傍で生理活性を発揮する脂質を脂質メディエーターと総称する。さらに、炎症を引き起こすものは炎症性脂質メディエーターと呼ばれ、主に細胞膜に存在するアラキドン酸(ARA, C20:4)という脂肪酸から細胞内の酵素反応によって産生される。体表的なものにプロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンなどがある。アレルギー炎症と密接に関わるロイコトリエンB4の受容体BLT1は横溝岳彦教授によって発見された分子である。

【原著論文】
本研究は、Federation of American Societies for Experimental Biology (FASEB)の「The FASEB journal」(www.fasebj.org)オンライン版に2018年11月1日付で公開された。
英文タイトル: Dietary omega-3 fatty acids alter the lipid mediator profile and alleviate allergic conjunctivitis without modulating Th2 immune responses
日本語訳: オメガ3脂肪酸食は脂質メディエーター組成を変化させることによりアレルギー性結膜炎を改善する
著者: Toshiaki Hirakata (1, 2), Hyeon-Cheol Lee (1), Mai Ohba (1), Kazuko Saeki (1), Toshiaki Okuno (1), Akira Murakami (2), Akira Matsuda (2), Takehiko Yokomizo (1)
著者(日本語表記): 平形寿彬 (1, 2), 李 賢哲 (1), 大塲麻衣 (1), 佐伯和子 (1), 奥野利明 (1),村上 晶 (2), 松田 彰 (2), 横溝岳彦 (1)
所属: (1)順天堂大学生化学第一講座、(2)順天堂大学眼科学講座
FASEB j. (2018) doi:10.1096/fj.201801805R
公開サイト:https://www.fasebj.org/doi/abs/10.1096/fj.201801805R。

Categorised in: 結膜炎・花粉症・ものもらい (結膜疾患)