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2018年9月5日

第10102回 免疫系を脂質で回避する

眼科医清澤のコメント:眼球内では通常の免疫機能が抑制されており、その破綻がいくつもの病気を引き起こすことが考えられています。それに関連する機序の一部がさらに見つかったと言う事のようです。その解説記事を採録しますが、相当に難解です。さらに原著の抄録をこのブログの頭書に採録いたしました。その著者に眼科医は含まれてはいないようです。

免疫系を脂質で回避する(これが原著のアブストラクトでの題名です) 眼のようないくつかの組織は、免疫細胞を局所的に抑制し、または組織に浸潤する能力を制る。

コレステロール硫酸(CS)がグアニンヌクレオチド交換因子DOCK2を阻害することにより、インビトロでの好中球およびT細胞の移動が抑制されることを見出した。 マウスでは、眼を覆う涙液膜の外層を形成する脂質を分泌する腺によってCSが生成された。

コレステロールからCSを産生する主要なスルホトランスフェラーゼを欠くマウスは、CSの局所的適用によって逆転された異なる眼内表面炎症モデルにおける免疫細胞の結膜および角膜への浸潤の増加を示した。

内因性免疫抑制におけるCSの役割を同定することは、それまたは他の生物活性脂質が、腫瘍などの免疫監視を回避する他の組織において役割を果たす可能性があることを示唆している。 http://www.sciencemag.org/about/science-licenses-journal-article-reuse ---今回の報道記事の要点です

---- 涙に含まれるコレステロール硫酸が眼を炎症細胞の浸潤から守る (http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1808/30/news015.html)2018年08月30日 15時00分 公開 涙に含まれるコレステロール硫酸が眼を炎症細胞の浸潤から守る (http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1808/30/news015.html)2018年08月30日 15時00分 公開

ーーーー 【硫酸コレステロールは、眼における組織特異的免疫回避を媒介するDOCK2阻害剤である (http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1808/30/news015.html)2018年08月30日 15時00分 公開 櫻井哲也 九州大学医学系研究拠点バイオインフォマティクス研究部免疫免疫学部門ほか、

http://www.sciencemag.org/about/science-licenses-journal-article-reuse

九州大学は2018年8月1日、涙の中に含まれるコレステロール硫酸(Cholesterol sulfate:CS)という脂質が、免疫細胞の動きに重要なタンパク質「DOCK2」の機能を阻害し、眼を炎症細胞の浸潤から守る働きをしていることを発見したと発表した。同大学生体防御医学研究所 主幹教授の福井宣規氏らと、慶應義塾大学との共同研究による成果だ。

生体には、免疫監視機構が発動しにくい組織や空間(免疫特権部位)がある。眼もその1つで、幾つかのタンパク質が免疫回避に働くことが知られている。同研究グループは2001年、DOCK2という分子が免疫細胞の動きに必須の働きをしていることを発見した。DOCK2は、DHR-2という領域を介してRacという分子を活性化させることで、細胞運動を引き起こす。

今回、DOCK2の機能を阻害する物質の探索を進める中で、CSがDOCK2の働きを強力に抑制し、免疫細胞の動きを止めることを発見。CSは特異的にDOCK2のDHR-2領域に結合し、DOCK2によるRac活性化を強く阻害していた。

そのため、CCL21やfMLPなどの走化因子に対する免疫細胞の遊走を調べたところ、CSが存在する場合、CCL21によるT細胞の遊走が障害され、DOCK2遺伝子を欠損したT細胞の遊走と同レベルにまで低下した。

fMLPによる好中球の遊走もCSによって障害されるが、CSをfMLPと同じ場所に添加すると、好中球はfMLPに向かって動くが、一定距離以上は近寄れないことが分かった。

つまり、CSがDOCK2の機能を阻害し、免疫細胞の運動をブロックすることが明らかになった。

次に、マウスを用いた解析では、コレステロールからCSを産生するのに重要なタンパク質「Sult2B1b」が皮膚や小腸以外にもハーダー腺で大量に産生されており、涙の中にもCSが多量に含まれていた。

一方、CSを産生できないSult2B1b欠損マウスでは、紫外線照射や抗原投与によって免疫細胞の浸潤を伴う眼の炎症が悪化した。この炎症は、CSを点眼すると野生型マウスと同レベルまで抑制できた。 これらの成果から、CSがDOCK2の機能を阻害し、免疫細胞の浸潤をブロックすることによって、眼の免疫特権環境の形成に関わってことが明らかになった。今後、免疫特権環境の理解と応用につながることが期待される。】

清澤注:ハーダー腺というのはげっ歯類の涙腺で眼科内では相当に大きなボリュームを占めています。学位論文でウサギの眼窩のマクロオートラジオグラムを取ったら、涙腺は非常に高いぶどう糖消費を示していました。しかし、なぜ単に涙腺と呼ばずハーダー腺と呼ぶのか?をいぶかしく思ったことが有りました。

Categorised in: 結膜炎・花粉症・ものもらい (結膜疾患)