ーーエムラクリームは外用局所麻酔剤ですが、劇薬でありその使用には医師の処方箋が必要な医薬品で、薬価収載されている薬剤です。ーーーー

質問;眼瞼痙攣 発症10年余りです。ボトックスを何回か打ったことがありますが、痛くて耐えられません。(眼瞼けいれん友の会で)注射前にエムラクリームを塗ると痛みが軽減されると某教授に教えていただきまして、早速ボトックス注射をしている神経内科を探し、ボトックスを打つ前にエムラクリームを使いたい旨お願いしました「エムラクリームは適用外処方になるから出せない、大学病院で聞いてきて。」と言われたので、紹介状を持って大学病院に行きました。そちらでも「うちではやってない」と言われ、エムラクリームを処方してくれる病院はありません。大学病院で、処方してくれる病院があると言うと「その病院に行ったらいいじゃない」と言われました。行きたいのは山々です。遠く、通院が大変だから近くで探していました。痛くなかったらボトックスを打ちたいと思っているのですが、ボトックス前のエムラクリームは広く知られてはいないのですか。 相談できるところがこちらしかありません。よろしくお願いいたします。
清澤のお答え:エムラクリームは単なる麻酔剤のゼリーですが、2剤を混合する事で皮膚への浸透を強めたものです。当医院でも冷やしたくらいの鎮痛では満足できない方には、時に使うことが有ります。最大の難点は、保険請求に含めることが出来ないこと(使用後にその材料費用を私費で請求する事も不適切なので、もし院内で使用すると、ボトックスの価格と比べればこれは些細なものですが、安くはない薬代を医院からの持ち出しで使う事になります。)もう一つの難点は、クリーム塗布後に約一時間患者さんを待たせなくてはならず、そのために待合室の席が単一の患者さんに長時間ふさがれるため、多くの患者さんには使えません。さらに、サランラップで一時間覆いますが、充血等が起きる為に眼に入ってはいけないとされてます。こうした処々の理由で、エムラクリーム(リドカイン及びプロピトカイン共融混合物)使用には消極的な施設が多いのだと思います。そして多くのボトックス施術をする医院では、その存在も知らない状況だと思います。受診の上、わたくしにご相談下されば、このクリームを患者さんが合法的に薬局で自分で購入できるように交渉いたしましょう。
参考事項:
◎エムラクリームとは:エムラクリームは、1984年にスウェーデンで承認されて以降、世界80ヶ国以上で承認を取得しています。国内においては、アストラゼネカ社とライセンス契約を締結し、開発が着手されました。2012年に「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」の適応症が承認され、2015年に、小児への適応及び「注射針・静脈留置針穿刺時の疼痛緩和」の効能・効果が追加されました。(国民健康保険による眼瞼痙攣に対するボトックス注射時の使用は認められていないという扱いになります。)
エムラパッチは、エムラクリームの剤形追加製剤であり、リドカイン及びプロピトカイン共融混合物の乳剤をセルロースシートに湿潤させた貼付剤として開発され、1993年にデンマークとスウェーデンで承認取得以降、世界50ヶ国以上で承認されています。本邦においても、エムラパッチはエムラクリームとの生物学的同等性が認められ、2017年に「皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和」「注射針・静脈留置針穿刺時の疼痛緩和」を効能・効果として承認されました。適正使用ガイドはエムラクリーム及びエムラパッチを適正に使用する指針となります。
- 合併症;重大な副作用
- ショック、アナフィラキシー(頻度不明):
- 意識障害、振戦、痙攣(頻度不明):
- メトヘモグロビン血症(頻度不明):
- その他の副作用:
- 精神神経系:(0.1~10%)
- 消化器系:(頻度不明)悪心、嘔吐。
- 皮膚:(10%以上)紅斑、蒼白、(0.1~10%)ほか
- その他:(0.1~10%)ALT増加(GPT増加)
使用上の注意
(禁忌)
- メトヘモグロビン血症のある患者
- 本剤の成分又はアミド型局所麻酔剤に対して過敏症の既往歴のある患者。
(慎重投与)
- グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G-6-PD)欠乏患者
- 心刺激伝導障害のある患者。
- 重篤な肝障害又は重篤な腎障害のある患者。などが説明書に記載されていました。
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