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2019年10月7日

11142:薬剤の副作用と神経眼科 ベンゾジアゼピン系薬物とその類似薬 若倉 雅登:総説紹介

清澤のコメント:薬剤性眼瞼痙攣のまとめです。一般の眼瞼痙攣患者さんでも興味を持つ方がおいでかと思いますので、抄出し採録します。神経眼科誌36(3号:零和元年9月25日発行)に掲載された若倉先生の最新の総説の抜き書き(著者承認済)です。(引用論文は省略しました。論文として読むには原本をご覧ください。)良くまとめられておりますので患者さんでも理解可能な内容としてご覧ください。近日中に、これとは別の鈴木幸久と清澤源弘連名の小さな総説も出版されます。現在そちらは印刷中です。出版を待って紹介したいと思います。

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Neuro-ophthalmol. Jpn. Vol. 36, No. 3 (2019)
(神眼36:304~ 308,2019)
薬剤の副作用と神経眼科
ベンブジアゼピン系薬物とその類似薬
若倉 雅登 井上眼科病院
Benzodiazepines and the Similar Drugs
Masato Wakakura
Inoue Eye Hospita1
要 約
ベンゾジアゼン系薬物(BZD)は,化学構造上本来のBZDだけでなく,臨床的にはしばしばチエノジァゼピンも含めて扱うことがある。また非BZDとされる薬物でもBZDと同様にγ アミノ酪酸(GABA)A受容体に結合して,抗けいれん,催眠鎮静,筋弛緩などの作用を持つ,薬理学的BZD類似薬がある これらの薬斉」による視覚系,神経眼科的副作用は意外と知られていないので,本稿では3項に分けてレビューした.すなわち1)視覚系副作用,2)薬剤性眼瞼けいれん,3)離脱症候群である。
眼科臨床においては,急性狭隅角緑内障における抗コリン作用は常に問題にされるが,重要度も頻度も高いと思われる神経眼科的副作用には関心が低く,服薬歴を聴取する機会1事少なかったと思われる。 これらの薬剤は非常に種類が多く,特に日本では世界の中でも飛びぬけて多用,乱用されているので, こうした副作用に留意することが重要である。
(神眼36:304~ 308,2019)

はじめに
ベンブジアゼン系薬物(BZD)は,構造的にベンゼン環とジアゼピン環(ベンブジアゼピン環=図1)を持つ化学構造物で,GABA(γ―アミノ酪酸)A受容体のBZDの結合部位(ベンブジアゼピン受容体,ベンゾジァゼピン部位と呼称されることがある)に結合して,GABAの薬理作用を増強する。この作用を利用した創薬によって,ジアゼパムという抗不安,抗けいれん,催眠鎮静,筋弛緩作用のある化合物が1950年代にまず作られた これを皮切りに1960年代以降,作用時間の異なるものなど多数のBZD,これと同等の薬理作用を持つチエノジアゼピン系薬物,さらには同じGABA-A受容体作動薬だが化学構造の異なる非BZDが合成され,臨床応用された.なお,チエノジゼピン系薬物は,ベンゾジアゼピン環とは異なるチエノジア
ゼピン環を持つ化学構造物であるが,薬理作用は同等のため臨床上はBZDとして扱われることが多い。
1980年頃からはその依存性,離脱症候群,また多岐にわたる副作用が次第に問題視されるようになり,欧米ではアシユトンマニュアルが出て,反省期に入った.
一方日本では,21世紀に入ってもほかの向精神薬より「軽い薬」として,各科で多用され,2010年には国連の国際麻薬統制委員会からその乱用を警告されるまでになったりこうした中で,眼科,神経眼科領域では,副作用や依存性に関して臨床的問題に注目されることは少なく, 日常臨床でもこうした薬物の服用歴を積極的に聴取する姿勢はほとんどなかった。筆者らは2004年,眼瞼痙攣患者の一部に明らかにベンゾジアゼピン系,チエノジゼピン系薬物が原因ないし誘因になっている症例を見出して,薬物性眼瞼けいれんとして発表しため,その後,服薬歴に留意するようになると,そうした症例は実は非常に多く,眼瞼けいれんの三分の一近くに及ぶ可能性があることを指摘した。
また,眼瞼けいれんの予備軍的状態や,調節,両眼視機能などにも影響する可能性を指摘し,「ベンゾジアゼピン眼症」を提唱した。
本稿では, これまで神経眼科でも見落とされがちであった,そうした問題について,文献的に考察することとする。
I.BZDの視覚系副作用
本薬に抗コリン作用があることから,「BZDのどの添付文書にも『急性狭隅角緑内障のある患者』には禁忌」と記されている しかし, この他の視覚や眼球の副作用については記載が乏しく,あっても「その他の副作用の項に散見されるのみである。
たとえば,BZDで最初に発見されたのはクロルジアセポキサイド(日本での先発品コントール®,バランス®)の添付文書の副作用の項には,視党や眼球の副作用は掲載されていない。次いで登場したジアゼパム(同セルシン®)の添付文書には,「精神症状」(0.1%未満)として,霧視,複視が副作用として記載されている。他に使用頻度の高いBZDの添付文書を調べると,アルプラブラム(同コンスタン®,ソラナックス®)には,精神神経系副作用(0.1~ 5%未満)の中に眼症状(霧視,複視)が, トリアブラム(同ハルシオン®)には,やはり精神神経症状(0.1%未満)の中で「視覚異常(霧視,散瞳,羞明,眼精疲労)が,ロラゼパム(同ワイパックス®)やロフラゼブ酸エチル(同メイラックス®)にも複視,霧視が記載されている チエノジアゼピン系のエチゾラム(同デパス®)には,霧視,調節障害が「眼症状」としてみえる.
霧視,複視,眼精疲労などは,おそらく副作用調査での自覚症状をそのまま掲載しており,その内容は全くわからない 複視も単眼複視,つまり霧視に近いものか,真の両眼複視かも確認されていない.しかし, 興味深いのは,羞明を含めていずれも精神神経症状の項に記載され,眼球の副作用ではないと認識している点である。ちなみに,非BZDのゾルピデム(同マイスリー®)には,「眼の副作用」として複視(0.1~ 5%未満),視力障害,霧視(頻度不明)が出ている。こうしたBZDの視覚系の副作用の可能性があるにも関わらず, これに関する症例報告はわずかである。渉猟し得た限りでは,ロラゼパムl0mg/dayを2週間連用して出現した調節不全例や,同剤を強迫性不安障害例に処方して複視が出現した症例報告⁷⁾があるにすぎない。実際,臨床上注意していると,ぼやける, ピントが合いにくい,あるいは遠方視時の複視などが時々あるいは常時生じる症例で,服薬歴を聞くと睡眠導入薬としてBZDなどを連用しているケースに出会うことが少なくない。しかも,その一部は減薬や断薬で症状が改善する。これらは,調節機能や両眼視機能の薬物による一過性, もしくは継続性低下を意味する可能性が高い。そのほかにも,「いつもより眩しさを感じた」「起床時,情景の色がいつもとは違って見えた」など視覚の高次脳機能障害を思わせる愁訴を聞くことがあり, これも断薬で改善した症例を経験している.健常者に同薬を単回投与であるが,視覚系への影響としてコントラスト感度低下が生じるとする研究がある。また,ロラゼパムの視覚認知への影響や,サッケードの潜時を遅らせるとの警告など,視覚の高次脳機能を含めたメカニズムヘの作用を強く示唆する研究が散見される。欧米で使用頻度が比較的高いBZDとしてまずロラゼパムが上がることから,本剤を利用した研究が目立つが,他のBZDでも同様の結果が得られる可能性が高いと,筆者は考える。それは,先述したように調節機能障害,両眼視機能障害を思わせる症例を少なからず経験しているほか,後述する眼瞼けいれんの予備軍とも思われるBZD連用者をみることがあるからである。
眼科における眼球に説明可能な原因がないさまざまな視覚や眼に関する不定愁訴の中に,BZDに関連したものは確実にある.しかし,従来眼科医はこれに気付いてこなかったことが考えられる また仮に気付いても,当事者にとっての深刻さを医師が理解していないことや,一例報告を歓迎しない昨今の学術誌の姿勢が,文献に現われてこない大きな理由ではないかと思う。私が「ベンゾジアゼピン眼症」の呼称を提唱した理由は,BZDによる眼瞼けいれん予備軍や,BZDによる既知,未知の視覚障害を見落とさないためである。
Ⅱ.薬物性眼瞼けいれん
遅発性ジストにア(遅発性ジスキネジアとほぼ同義)は,抗精神病薬の連用あるいは連用後離脱時の副作用としてよく知られている。 局所ジストニアに分類される眼瞼けいれん,その重症型とされるMeige症候群もこのように薬物性でありうる。
 この抗精神病薬の概念には,マイナートランキライザー,睡眠導入薬,てんかんなどに応用されるBZDは含まない。従って,BZDが薬物性眼瞼けいれんの原因になるという常識は,かつてはなかった。

 我々は,BZDを処方されている症例に,眼瞼けいれんが発症する症例を多数みつけ,エチゾラムをはじめとした広義のBZDが眼瞼けいれんを起こしうることを世界に先駆けて2004年に報告した。

 これは,高木ら,我々と別のグループからも報告されたが, 日本で多く報告される背景には,欧米諸国に比べてこの系統の薬物が非常に頻回に,かつ継続的に処方されていることがある。

 その後の研究では,BZDの減量,中止により,症状が明らかに軽減する例が少なからずあることも紹介した。 またSuzukiらは,薬剤性も本態性眼瞼けいれんともに視床や淡蒼球の脳糖代謝が充進することを,ポジトロンCTを用いた研究で示し,原因によらず眼瞼けいれんには共通したメカニズムが働いている可能性を示した.さらに,眼瞼けいれんのうち強い羞明を持つ群は,そうでない群に比して視床の糖代謝が有意に高いことも示された.
こうした中で,神経内科を中心にクロナゼパムを本症に用いることがある.しかし, 古い症例報告はあるが,その効果や副作用に関する十分な研究はなく,筆者の経験でも一過性の抗不安効果と思われるメリットはあるものの,継続使用を推奨する根拠に乏しい.
 さて,2012年の1年間に我々の施設に通院した眼瞼けいれん患者,1,000例以上について後ろ向き調査研究を行った結果を発表した。この中には少なくとも32%の症例で,症状発現前にBZDを含む向精神薬が使用されていたので,薬剤性である可能性は高い。359例のそうした症例に使用された薬剤の上位8位までを図3に示す 。さらに下位の薬剤については別途報告した。
 列挙された薬物の中で,2位にあるゾルピデムは非BZDである.全身および局所ジストニア治療の選択肢になりうるとの報告がある。しかし,結合する受容体はBZDと同等であり,上記の我々のデータからも本症発症の危険因子と考えられるので,慎重な扱いが必要である。

図3に列挙された薬物のうち,エチゾラムを除くと,添付文書に副作用として「眼瞼けいれん」を上げている薬剤はない。これは,非常に問題で,筆者は関連論文別届を書簡とともにPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)宛に少なくとも2度送り注意を喚起したが,何ら対応がなかった。副作用報告を出せということらしいが,千例は優に超える症例個々の報告を書くことは,現実として物理的に不可能である.逆にその中から数例選択すればバイアスがかかるし,副作用例は多くないとの予見を与えてしまうだろう。なお,他のBZDの副作用として眼瞼けいれんの症状に近い記述として,「羞明」がトリアゾラムの添付文書に記載がある。

ところで,BZDによる症例の特徴は,眼瞼の運動症状よりも,羞明,眼痛,違和感,ぼやけ感など感覚過敏と考えられる所見が前面に出ている場合が多いことである。これらの症例を,我々は眼瞼けいれんの感覚過敏型と考えている。 事実,運動外症状が目立つ例があることは,他の研究でも指摘されている。しかし,一見すると不随意運動がないか乏しいので,眼瞼けいれんとは気付かないか, ドライアイ,眼精疲労,心因性の愁訴などとされやすいのも事実である。

また,眼瞼けいれんを局所ジストニアととらえ,不随意運動が欠如しているものは眼瞼けいれんとは診断しない傾向は,神経内科を中心に存在する。それゆえ身体症状症,身体表現性障害,羞明症候群などと診断されている症例もみられる。このあたりは,今後さらなる議論と用語統一が必要である.

Ⅲ.BZDの離脱症候群

BZDに依存性があること,それゆえ減薬,離脱が困難で,離脱中にさまざまな離脱症候が発現することは,アシュトンマニュアルに詳細に記載されているが、ここには薬物性眼瞼けいれんやその離脱における関連症状の記載はない。

眼瞼けいれんの重症例の中に,BZDの離脱が発症,もしくは重症化に関与したと考えられる例があることに我々は気付いた。その後も,長期連用による眼瞼けいれん例で,急速な離脱を行うと,心身の離脱症状に加え,眼瞼けいれんの増悪がみられる例を複数経験している。

眼瞼けいれんという疾患には直接言及していないが,BZDの離脱症状として,顕著な羞明,光恐怖,光に対する過敏性1920は古くから記載されていて,遷延性離脱症候群の存在に言及しているものもある。

BZDの依存性などを総括したアシュトンマニュアルが公表されて以降,それを越える研究や記載をすることが困難になったのか,BZDの副作用や離脱症候群をテーマとする論文は非常に少ない そうした中で,LaderはBZDに関する約6万の文献の総括を行っていて、その中で,BZDがリスクベネフィット比で上回れるのは24週の短期使用に限られることや, また

 

離脱中に生じる重要な症候として,不安,不眠,筋力低下や不随意運動,知党過敏をあげている。不随意運動や知覚過敏は眼瞼けいれんにおける重要な症候であり,注目すべき点だと考える。
利益相反: ○無・有

(清澤注:文献省略します:興味のある方は、原著を取り寄せてご覧ください。次の動画は2分でベンゾジアゼピンの作用を説明しています。ご参考に)

 

神経科学的に挑戦

ベンゾジアゼピンは、一般的に不安障害や睡眠障害の治療に使用されます。彼らは、神経伝達物質ガンマアミノ酪酸(GABA)の受容体に作用することにより、脳に効果を発揮すると考えられています。このビデオは、ベンゾジアゼピンの作用メカニズムについて説明します。

2分間の神経科学へようこそ。2分間以内に神経科学のトピックを説明します。今回は、ベンゾジアゼピンについて説明します。

ベンゾジアゼピンは、不安障害や睡眠関連障害の治療に一般的に使用される化学構造に基づいて命名された薬物のクラスです。それらには、バリウム、ザナックス、クロノピンなどの有名な薬が含まれます。ベンゾジアゼピンのクラスには何十もの薬物がありますが、それらがすべて効果を発揮するメカニズムは類似していると考えられています。

ベンゾジアゼピンの鎮静作用と不安緩和作用は、神経伝達物質ガンマアミノ酪酸(GABA)の受容体での薬物の作用に起因すると考えられています。特に、ベンゾジアゼピンはGABAa受容体と呼ばれるGABA受容体のサブタイプで作用します。ベンゾジアゼピンにも結合するGABAa受容体は、ベンゾジアゼピン受容体と呼ばれることもあります。

ベンゾジアゼピンがGABA受容体に結合するとき、GABA自体が結合する場所とは別の場所で結合し、GABAの結合に影響を及ぼします。このタイプの作用はアロステリック効果と呼ばれ、ベンゾジアゼピンの場合、GABA受容体での作用が増加します。ベンゾジアゼピン結合がGABA受容体での活性にどのように影響するかについての完全なコンセンサスはありませんが、GABA結合が受容体を活性化する可能性を高めること、あるいはGABAが受容体に結合するときの効果を高めることを示唆する証拠があります。

その効果は、イオンチャネルを開き、負に帯電した塩素イオンをニューロン内に通過させることです。この負に帯電したイオンの流入により、膜電位がゼロからさらに押し出されて過分極され、ニューロンが活動電位を発火する可能性が低くなります。このタイプの神経抑制は、ベンゾジアゼピンの効果の基礎です。不安と覚醒に関係するネットワークを構成するニューロンの活動を抑制することにより、薬は鎮静効果を生み出すことができます。

Categorised in: 眼瞼痙攣