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2019年5月25日

10743:パーキンソン病の視覚症状、眼症状と電気生理検査(再訪)

先の記事において(⇒リンクパーキンソン病の眼の問題を取り上げました。実際に目に訴えがあることはパーキンソン病の患者さんには珍しく有りません。繰り返しますと:

『パーキンソン病の目の徴候:

体の硬さと震えがパーキンソン病の主な症状です。しかし目の訴えもパーキンソン病では少なくありません。

パーキンソン病の患者は、思いがけない閉瞼(眼瞼けいれんの一種といっても良いでしょう)が頻繁に起こるので苦労します。目の運動障害は機能的な観点からはあまり問題を起こしませんが、その点に注意して検査してみればその変化は明白です。例えば、上向きの眼球運動は、パーキンソン病でも老化と共に減弱します。これは多くの老人にそれほどではないにせよ常に起こっています。眼を動かすと目に苦しさを感じ、それが持続することもあります。

目の動きのわずかな調節が悪いので、患者は特定の方向を見たときに複視を経験する事があります。』『ある患者では複視を訴え、疲れて読書が出来ないという訴えとなります。これらの問題はすべてパーキンソン病の人々の脳幹の退化によって起きるものです。 この退化は脳内の重要な神経伝達物質であるドーパミン濃度の低下に起因するものです。』

更にその先で、私は「視覚誘発電位(VEP)および網膜電位図(ERG)のような脳の電気活動を測定する特別なテストではパーキンソンを持つ人々の視覚の異常を検出できます。」と記載しました。この件に関しての質問を、本日いただきました。

その答えから申し上げますと、上記の文章は海外の公的なホームページから翻訳して採録したものです。ですからこの記載に誤りはないのですが、この記述は眼科の学問的には正しいのですが研究的な診断における有効性を述べたもので有って、個別の患者さんの実臨床での治療方針立案や治療に関しては殆ど無用です。国内の眼科医療機関でこれを医療保険の中の医療として行ってくれるところは殆ど無いと思われます。

と言ってしまっては寂しい話なので、もう一度文献に当たってみました。

  • まず、Alteration of visual evoked potentials and electroretinograms in Parkinson’s disease、Electroencephalography and Clinical Neurophysiology 66,1987,349-357(注:1988年に米国の病院で同期のフェローを務めた懐かしい名前の女医さんの論文です)

パーキンソン病における視覚誘発電位および網膜電図の変化パーキンソン病患者の視覚誘発電位(VEP)および網膜電図(ERG)の変化 Irène Gottlob

https://doi.org/10.1016/0013-4694(87)90032-0

抄録:

正常な眼底および正常な視力を有するパーキンソン病(PD)を有する24人の患者の群を電気生理学的に調べた。様々なコントラストレベルでのチェッカーボード反転VEPおよびERG(P-ERG)、ならびに明所視および暗所輝度のERGを記録し、年齢が一致した対照群と比較した。以前に報告された患者のVEPの潜時増加は、高コントラストのパターンについてのみ確認された。患者の暗所見および明所視輝度ERGは通常の潜時を示したが、すべての光強度で暗所および明所視b波の振幅と明所視a波の振幅は有意に減少した。P-ERG振幅は50%コントラストで減少した。ドーパミン作動性治療を受けている患者(n = 17)と治療を受けていない患者(n = 7)で同じ結果が得られた。

これらの結果は、ドーパミン受容体が見出されている網膜レベルで既に変化が起こっていることを示唆している。したがって、報告されたVEPの変化は、視覚皮質だけによって引き起こされるのではない。

②は「パーキンソン病の電気生理学的な診断」という物で、著者はLukhanina Eら。(Diagnosis of Parkinson’s Disease by Electrophysiological Methods)著者はウクライナの人です。

――前文――

パーキンソン病(PD)の効果的な鑑別診断には、錐体外路系の機能的状態を客観的に反映する有益な指標が必要です。そしてまた、抗パーキンソン病療法の有効性を評価するとき、それは定性的および定量的特徴の両方を有することが不可欠であり、治療を修正しそして疾患経過を予測することを可能にする。

パーキンソン病(PD)における有益な診断方法の1つは表面(干渉)筋電図検査である。既に知られているように、黒質線条体ドーパミン欠乏症は、筋緊張性活動および随意運動に対する中枢上脊髄制御の妨害をもたらす(Valls-Solé&Valldeoriola、2002)。

筋電図的には、錐体外の機能不全は、安静時の筋肉の高レベルの生体電気的活動、運動単位の伝導速度の変化および同期化によってそれ自体が示される(Farina et al、2004; Semmler&Nordstrom、1999)。

表面筋電図(EMG)を評価するための伝統的な方法は、振幅分析とスペクトル分析に基づいている。しかしながら、筋電信号はその性質上非線形である(Nieminen&Takala、1996)。表面筋電図は、多数の単一筋線維活動電位の合計によって形成される。したがって、さまざまな世界の診療所が、パーキンソン病(PD)における障害の運動機能を定量化するために、EMGの非線形時系列分析に基づく新しい関連方法を探している(Del Santo et al、2007; Meigal et al、2009)。

フラクタル解析に基づく次元数またはEMG分布の高次統計量などのいくつかの他の新規なEMG特性もまた、神経筋状態に敏感であることが証明されている(Swie et al、2005)。

この疾患の主な症状は運動障害であるが、パーキンソン病の徴候はまた、感覚ゲーティングの障害および認知機能低下を含む様々な多様な異常を含む(Lewis&Byblow、2002)。

何人かの著者は、感覚運動の統合に影響を与える感覚処理の調節不全のために、パーキンソン病の運動障害も発症する可能性があると示唆している(Abbruzzese&Berardelli、2003)。大脳基底核の提案されている重要な機能の1つが運動制御のための感覚入力のゲーティングであるため、これは重要な問題である(Kaji、2001)。

多数の研究が、パーキンソン病患者における体性感覚(Rossiniら、1998)、聴覚性(Teoら、1997;)および視覚(Sadekov、1997)の著しい変化を示している。

脳誘発電位の評価は、パーキンソン病の重症度の評価に潜在的可能性がある。現代の神経生理学では、運動機能の組織化とその障害の根底にある中心的なメカニズムの研究はますます内因性皮質イベント関連電位、偶発的な負の変動(CNV)を含む一連の電位の分析を含みます。CNVの程度は、注意のレベル、動機、および意欲的な努力に左右される(Deecke、2001)。この可能性の大きさは、パーキンソン病を含む運動障害を伴う疾患において減少することが知られている(Aotsukaら、1996; Pulvenmullerら、1996)。CNVは、パーキンソン病患者においてレボドパ投与後に有意な増加を示すことが示されており、その人々における中枢ドーパミン作動系の役割を示唆している(Oishi et al、1995)。

電気生理学的方法は、運動機能障害および感覚機能障害を客観的に反映しているが、それらは依然としてパーキンソン病の臨床評価においてかなりまれにしか使用されていない。(以下略)

Categorised in: 眼瞼痙攣