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2018年12月24日

10355:眼瞼痙攣患者の意識:若倉雅登氏:記事紹介

清澤のコメント:眼瞼痙攣は本当に長い間、原因に基づく治療の出て来ていない疾患です。これは眼瞼痙攣の治療や疫学研究では多くのことを指導いただいている若倉先生の投稿記事ですが、今回は特にこの疾患の患者さんにも興味の湧きそうな話題が取り上げられています。

 一方、この話を聞いて来院した明らかに薬剤性ではない患者さんに「私も薬剤性眼瞼痙攣に違いない。処方した医師に抗議したいから書面を書いてといわれて困った。」ということを話された某大学病院で神経眼科外来を担当している精神科にも通じた神経眼科医も居られました。

 私のスタンスとしては、今の医学水準に遅れない診療を黙々と行う。社会的支援に関しては得られるものがあれば、それに誘導する。そしてベンゾ系処方が多すぎるかもしれないと思う時には決して前医の批判としてではなく、その減量を試みてくださいますかという内容の手紙を出すにとどめています。

 ――引用――

現在、私の外来患者のおよそ40%の主病名が眼瞼痙攣で占められている。私たちはこのたび「日本における眼瞼痙攣」と題した論文を、Neuro-Ophthalmology誌に発表した。

この研究は二〇一二年の一年間、井上眼科病院に初診した眼瞼痙攣患者1116名(男女比は304対812)を対象に、本症の臨床的特徴や患者の生活や心理的特徴を含めた臨床像を明らかにしたものである。

この中で、いくつかのことを強調しているので、それを以下に列挙する。

(1) 眼瞼痙攣という名称からは眼瞼の運動異常が想像される。ジストニアといわれる不随意運動により、開瞼困難や瞬目過多、瞬目の異常が前面に出た症例もかなりあるが、運動異常は目立たず、羞明、眼痛、眼部不快感、乾燥感などの感覚過敏を主体にした群も少なくない。これらはまだ医師の間でも十分に理解されていない。

(2) 診断確定までの期間は1~5年以上のものが77%を占める。過去の診断名はドライアイ、加齢眼瞼下垂、うつ状態などである。また、線維筋痛症、むずむず脚症候群、舌痛症が併存している例もあり、関連病として注目すべきかもしれない。

(3) 羞明や眼病など、感覚異常に開瞼困難という運動が併存することはsensory-motor disintegration(清澤注参照)と解釈すべきであろう。

(4) この疾患の生活への質(QOL)への影響は大きく、それは私たちの重症度五段階分類(五が最重症)で重症なほど、QOL低下は目立ち、軽症でも10〜20%の患者で明らかに低い。

(5) 気分障害→(うつ状態)に関する評価においても、重症度が高いほど、その傾向が強いが、重症度が一、二の軽症群でも40%以上の患者で、うつ傾向がある。

(6)32.1%の患者は自覚症状発症前から神経系の薬物を連用しており、薬物性の可能性があった。使用されていた薬物の上位はエチゾラム、ゾルビデム、ブロチゾラム、フルニトラゼパム、アルプラゾラム、トリアブラムといったベンブジアゼビン系か薬理学的に類似する薬物で、不眠、不案などに使用されていた。

(7) 薬物連用がおおむね5年未満なら、減薬変更により症状が軽減する例があるが、10年以上連用している場合は離脱が難しいか、離脱が成功しても改善率は低かった.

(8)ボツリヌス治療は68.6%の患者が受けていたが、この治療は重症だから行うべきというより、軽症に分類されているケースでも試みるべき対症治療である。

(9)ボツリヌス治療の評価について、痛みに対する評価法で「痛み」を「本症によるつらさ」と読み替えた10段階で回答(0はなし、10は想像できる最大のつらさ)を求めたものでは、前回の注射前が平均6.2、注射後の最善時が3.7、次の注射直前が6.2であった。注射後の最善時でも、かなりの程度の「つらさ」が残っていることがわかり、満足度も高くはなかった。重症例では、常時眼球使用が困難な状態にある私たちの提唱する「眼球使用困難症候群」に相当する。眼球や視路が健常だとしても、その機能を自在に使うことができない、この病態を身体障害者福祉法は想定しておらず、視力、視野の結果でしか視覚障害を認定しない状況が長く続いている。

医師や一般の人々の理解が深まらない中、患者友の会は10年以上、活動している。その会の協力で集計したアンケートでは、眼瞼痙攣患者144名中、「自分は『眼球使用困難症候群』だと思う」と回答した人が35名(24.3%)であり、自分は視覚障害者だと思うかの質問には「非常にそう思う」が15名(10.4%)、「かなりそう思う」は28名(19.4%)と三分の一が視覚障害者だと自認している。視覚障害者と法律が認めるなら、障害者としてのリハビリテーションや補装具、施設の利用が容易で社会復帰がしやすくなるはずであり、医学による治療に限界がある以上、医療者側もそのことにもつと関心を持つべきではないかと感じる。

Wakakura M, Yamagami A, Iwasa M..Blepharospasm in Japan: A Clinical Observational Study From a Large Referral Hospital in Tokyo. Neuroophthalmology. 2018 Jan 9;42(5):275-283 

Categorised in: 眼瞼痙攣

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