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2018年12月3日

10313:Q6 眼瞼けいれん,片側顔面けいれんについて教えてください:自著記事紹介

清澤のコメント:あたらしい眼科 第35巻、臨時増刊号、加齢性疾患への対応Q&A 斜視、白内障、神経眼科 Q6 眼瞼けいれん,片側顔面けいれんについて教えてくださいp230-233 (回答者 清澤源弘、小町祐子)の記事を採録します。

Q6 眼瞼けいれん,片側顔面けいれんについて教えてください

■眼瞼けいれんとは,眼輪筋の過度な収縮により開瞼困難をきたす疾患である

■片側顔面けいれんは,顔面神経板部への血管からの圧迫により,口元までを含む顔面の片側に繰り返し強い攣縮を起こす疾患である

■片側顔面けいれんの鑑別には頭部MRIのC:SS法の撮像が望ましい

■いずれの治療にもボツリヌス毒素注射が有効であり,患者の生活の質(QOL)は大きく改善する.

しかし,ボツリヌス毒素注射は対症療法であるため,反復注射を行う必要があることを伝え,理解を得る必要がある.

はじめに

眼瞼けいれんとは,眼輪筋の間欠性または持続性の不随意な過度の収縮により開瞼困難をきたす疾患である。

ほかの神経学的,眼科学的異常が原因となっていないもので,局所性ジストニアの一型に分類される。40歳代以降に多く,女性に多くみられるが,20歳代でもみられる1).

一方,片側顔面けいれんは,顔面神経根部への血管からの圧迫により,口元までを含む顔面の片側に繰り返し強い攣縮を起こす疾患である。

いずれの疾患も重症化すると患者の生活の質(quahty of life:QOL)に大きく影響するため,早期に適切な診断と治療を開始すべきである

症状と原因

眼瞼けいれんの患者は, 日の不快感や羞明を訴えて受診することが多い.もちろん,目の開けづらさなどの運動症状の訴えもみられるが,強い感覚症状を伴うことが特徴的な疾患であることを十分理解しておく必要がある。

「痙攣」は筋の攣縮を示す用語であるため, 目の不快感や羞明を訴えて受診した患者がその診断に納得するのにも十分な説明を要する。眼瞼けいれんの症状は,以下の3症候にまとめられる。

①運動症状:眼瞼の開きにくさ 瞬目のしづらさ,瞬目過多,など.

②感覚症状:羞明感や違和感,不快感(しょぼしょぼ, ごろごろなど).瞬目がうまくいかないためのドライアイ症状も,感覚症状である.

③精神症状:抑うつ感,など.

この3症候について検査・評価を行うことで診断に至る。

眼瞼けいれんは,原因によって以下のように分類される。

①本態性眼瞼けいれん:明確な原因のないもの.

②症候性眼瞼けいれん:パーキンソン病,進行性核上性麻痺,脳梗塞などの疾患に伴い発症するもの.

③薬剤性眼瞼けいれん:抗うつ薬,抗不安薬などの薬剤を長期間服用することで起こるもの.

とくに,①本態性眼瞼けいれんと③薬剤性眼瞼けいれんについては,脳内の糖代謝の変化をみれば両者は同じ現象と考えられる最近話題になりはじめた,外淡蒼球への「深部脳刺激電極埋設手術」は,抑制性の神経伝達を加速させるものとも解釈できる2). 薬剤性眼瞼けいれんの誘因となるベンゾジアゼピン系薬は,睡眠薬や抗不安薬として使用されている脳内の中枢性ベンゾジアゼピンーGABAA受容体に結合することにより神経細胞の興奮性が抑制されるブロチゾラム,ジアゼパムなどが代表的であるチエノジアゼピン系薬のエチゾラム(デパスなど),非ベンゾジアゼピン系薬のゾルピデム酒石酸塩(マイスリーほか)なども同様の作用機序である. 一方片側顔面けいれんにおいては眼の周囲のみならず,頬から口元まで顔の左右どちらかがひきつれるような痙攣症状が起こる眼瞼けいれんと同様に羞明や日 の不快感も訴えるが,その頻度は眼瞼けいれんより低く, 運動症状の訴えが主である片側顔面けいれんの原因は,血管の顔面神経根部への圧迫が大多数を占める。まれに腫瘍や動脈瘤などが原因となることもあるが,いずれにしろ眼瞼けいれんと異なり頭蓋内に器質的病変が存在する疾患である。

眼瞼けいれんの診断

眼瞼けいれんの診断では,感覚症状と痙攣の状態を的確に把握することが重要である.

瞼がピクピクするといった訴えもあるが,このなかにはドライアイや眼精疲労に合併する眼瞼ミオキミアが含まれるため,鑑別を要する。最初に,問診票に記載された内容をもとに,検査前に主訴病歴の簡便な聴取が行われる。検査時の間き取り内容をもとに,診察室では「眼瞼けいれん疑い患者」として観察と諸検査を開始するまず,問診の会話中に眼輪筋の動きに注目し,視診にて限瞼けいれんと片側顔面けいれんを直感的に見きわめることが必要である。 さらに,一般所見に加えて涙液検査を実施し,ドライアイ所見の検索を行う。その後,「眼瞼けいれんの疑い」があることを告げ,精査に回す。

 1.運動症状の評価:(表 1,2,若倉表 )

 はじめに,「眼瞼痙攣調査質問表」10項目について問う(表1)瞬きの頻度や目の開けづらさといった運動症状と,羞明や不快感などの感覚症状の双方についての自覚を問う内容である。

1~2項目で「眼瞼けいれんの疑い」,3項目以上で眼瞼けいれんと診断する。

 ついで,運動症状の評価として以下の三つの随意瞬目テストを行う。

 ①軽瞬前 頭筋を使わずに(眉毛部分を動かさず), 歯切れのよい瞬日をゆっくりとリズミカルに行う。

②速瞬:できるだけ速くて軽い瞬目を10秒間行う

③強瞬:強く閉瞼し,すばやく開瞼する動作を10回行う。

これら3種類の瞬目を 0~ 3の 4段 階で「随意瞬目テスト」(表2)に書かれた基準をもとに評価する。また,患者自身にも自己評価させる

 2.感覚症状の評価

眼周囲の違和感や羞明の有無を聴取するとともに,感覚症状のひとつとしてドライアイの評価を行う。涙液メニスカス,涙液層破壊時間(tear llm break―up time: BUT).点状表層角膜症(superndal punctate keratopathy:SPK)の有無により,涙液の質を評価し,Schirm-er試験により分泌量を確認しておく.

3.精神症状の評価

1、 CES- D(米国国立精神保健研究所疫学的うつ尺度: Centerf forepidemiologic studies― depresdon scale)によるうつ症の評価20の項目について,0~3の4段階評価のアンケート形式で,16点以上で気分不快(うつ症)と診断する

2、服薬治療歴および眼科治療歴の聴取薬剤性限瞼けいれんの可能性を確認するまた,白内障手術などが誘因になることもある.

片側顔面けいれんの鑑別診断一MRI画像診断

前述の通り,片側顔面けいれんは頭蓋内の器質的な病変によるものであり.眼瞼けいれんとの鑑別診断を行う必要がある.MRI撮像のCISS法により小脳動脈によるvascular compresdonがよく見つかる.

治療

「眼瞼けいれん診療ガイド ライン」によれば,治療法の第一選択はA型ボツリヌス毒素(以下,ボツリヌス毒素)療法とされる.¹⁾また,片側顔面けいれんにおいても奏効率は高い.

ボツリヌス毒素は生体由来の毒素製剤である.保険適用として認められている唯一の方法であるが,高額であり,施注には資格を要する.内服薬を併用することもあるが,その有効率は低い.以下にボツリヌス毒素治療の説明におけるポイントをあげる.

①治療の機序:眼輪筋に 軽度の麻痺を起こさせることで症状を軽減させる対症療法であること(根治をめざす治療ではないこと).

②効果の一時性:症状の軽減は薬の効果が持続している間の一時的なものであること.

③効果の出現および持続期間:即効性はないが,おおむね1週 間程度で効果が出はじめ,3~4カ月の持続性があること(ただし,4国人により差が大きいこと).

④個人差:効果には個人差が大きく,各患者の環境や精神状態などによっても左右される場合が多いこと.

⑤副作用:効果が出すぎた場合,表情の作りにくさや口元が動きづらく飲食に多少の支障が出ることがあること.また,かえって開瞼しづらくなったり,軽度の眼筋麻痺による複視が出現したりするとの報告があること.ただし,これらの副作用は主効果同様一時的なものであり,日にちが経過し効果が切れれば必ず治ることも伝える.

⑥費用:保険はきくが,高額であること繰り返し治療を受けるには,それなりに大きな経済的負担を伴うからである.

次に,実際の施注における注意を説明する皮内筋肉注射であるため痛いこれについては施注者の技術によるところも大きいため,できるだけ手早く行えるように経験を積む必要がある.さらに,施注後の見た目の問題で,施注部位の出血,皮下出血を伴うことがある とくに,皮下出血は帰宅後に目立ちはじめて数日継続し,患 者の日常生活上の対人関係に影響を及ぼすため,抗凝固剤の内服などをしている患者への施注においては,止血に十分留意する必要がある。施注間隔についても,保険請求上の要件で,必ず2カ 月は間を開けることを説明しておく。2カ 月以上経過したのちは,患者本人の選択で決定可能である実際には,眼瞼けいれんは3カ月,片側顔面けいれん6カ月程度の間隔であることが多い。

診断と治療に理解が得られたら,ボツリヌス毒素施注に対する「同意書Jを取得する.

ドライアイ症状が強く眼瞼けいれんによる摩擦の軽減を図るべき症例では,コラーゲンまたはシリコーン製の涙点プラグによる治療の説明を加え,ボツリヌス毒素施注と併せて治療を実施する.

ボツリヌス毒素施注と効果の実際

 重症度と反応を診て,量を増減する。筆者らは50単位を1.5mlに溶解し,眼瞼けいれんは総量1.3ml,片側顔面けいれんでは総量1.0mlになるように薬液量を調整するボツリヌス毒素治療は眼瞼けいれん治療の第一選択ではあるものの,初期無効例が20%程度存在する.それらの患者に対してはボツリヌス毒素以外の治療を利用・併用する。

ボツリヌス毒素以外の治療

 眼瞼けいれんには,ボツリヌス毒素以外に以下のような治療が存在する.患者のQOLの状況により選択していく。

  1. 経口薬の併用

 眼瞼けいれんは脳内の抑制系が発動しないことが原因と考えられるため、クロナゼパム(リボトリール®など), トリヘキシフェニジル塩酸塩(アーテン®など)の投与を試みる。ただし,前述の通り,ベンゾジアゼピン系抗不安薬が原因の薬剤性眼瞼けいれんが存在するため,薬物依存に留意しなければならない。漢方薬の抑肝散加陳皮半夏も併用可能である。

知覚トリックの利用

指を目尻にかけることやクラッチ眼鏡など,触覚による知覚トリックが有効である.水泳帽やバンダナ利用例もみるかずきテープもおそらくこの範疇で効く.

眼輪筋切除(兼眼瞼挙筋短縮)術

重症例の最終手段として形成外科に紹介し,本人の希望があれば眼輪筋切除(兼眼瞼挙筋短縮)術を実施する.手術によリー時的に満足を得られることになるが,ボツリヌス毒素施注頻度は減じない.表情が変わってしまうことは十分に説明しておく必要がある.

「眩しさ」「痛み」の治療

「眩しさ」「痛み」に対しては,遮光眼鏡の処方を早期から考慮する鎮痛への配慮として,瞬目による摩擦を減ずるレバミピド点眼併用も可能である。眼瞼けいれんに伴う疼痛については神経侵襲性疼痛だけでなく,神経障害性疼痛の可能性も考慮する。片側顔面けいれんの場合は微小血管減圧術が根治療法となる。ただし、顔面神経麻痺や聴力障害といった合併症のリスクもある。とくに70歳以上の高齢者に対する適応は慎重に決める必要がある.

観察時期と施注スケジュール               

ボツリヌス毒素治療については、施注2カ月以降であれば次回の施注が可能である。

 2回日以降の施注については施注による効果を含め, 自分の症状について自己観察してもらうことが有効である。患者自身が治療経験を重ねることで、症状の再燃に伴う施注の希望や、前回施注効果との比較によって、「施注筒所」・「施注量」増減の希望などが患者本人から得られる。 各自の症状について自分自身で把握してもらうことで, ドライアイ治療を含めて、治療をカスタマイズすることが可能になる。また、医療者側からの施注時期の客観的な判断としては「随意瞬目テスト」を定期的に行い、その合計得点で評価する。

おわりに

 眼瞼けいれん,片側顔面けいれんとも,その症状や患者本人の苦痛は周囲に理解されづらく、患者のQOLの低下を招く。患者の要望やニーズを十分に把握するよう努め、できる限りQOLを維持する治療が行えるように配慮する。ボツリヌス毒素の効果を含め、各自の症状に合わせて要望を取り入れ、積極的に治療に参加してもらう。可能であれば院内に話を聞く係を置くことや、「限瞼・片側顔面痙攣友の会」への参加を勧めてみることも有効である.

文 献

  1. 日本神経限科学会眼瞼痙攣診療ガイドライン委員会:眼瞼けいれんガイドライン 日眼会誌115:617-628,2011

2) Suzuki Y, Kiyosawa M, Wakakura M et al: Clucose hyper

metabolisnl in the thalamus of patients with drug-related

blepharo spasm Neuroscience 203 :240-249,2014

3)清澤源弘 小町祐子 高橋真美:眼瞼痙撃の治療 神経眼科34:1411-20,2017

◎この記事の出典は、あたらしい眼科 第35巻、臨時増刊号、加齢性疾患への対応Q&A 斜視、白内障、神経眼科 Q6 眼瞼けいれん, 片側顔面けいれんについて教えてください p230-233 (回答者 清澤源弘、小町祐子)です。(記事の再検要)

Categorised in: 眼瞼痙攣

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