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2018年5月30日

9898:眼瞼痙攣の治療ー 私はこうしている ー清澤源弘:講演要旨です

WEB セミナー9898:眼瞼痙攣の治療 私はこうしている ー清澤眼科医院 清澤 源弘

2018.5.30


本日の事前登録は有難い事に500人もいらしたそうです。スライドと動画の作成に協力いただいた視能訓練士小町先生他の医院職員の方々に感謝申し上げます。このような機会を、身に余る光栄に存じます。
本日のお話から図を省き、概略を採録紹介いたします。

 

目次:

1、       眼瞼痙攣 とは

2、       眼瞼痙攣の治療

3、       治療を成功させるための診察のながれ

3,1・診断にいたるながれ

3,2・診断から治療へ

3,3・治療の実際

3,4・再診について

4、 患者のニーズとその対応

5、おわりに 本日のまとめ

 

  ――以下が、お話本体のシラバスです――

1.     眼瞼痙攣とは

・眼輪筋の間欠性または持続性の不随意な過度の収縮により開瞼困難をきたす疾患

・他の神経学的、眼科学的異常が原因となって いないもの

・局所性ジストニアの一型に分類される。

40代以降に多く、女性に多くみられるが、20代でもみられる

――

〇眼瞼痙攣の症状

運動症状

眼瞼の開きにくさ 瞬目のしづらさ

感覚症状

羞明感

違和感・不快感  (しょぼしょぼ、ごろごろ  など)

〔瞬目がうまくいかないためのドライアイ症状を含む〕

精神症状

抑うつ感 など

――

〇原因に因る分類

・本態性眼瞼痙攣:明確な原因のないもの

・症候性眼瞼痙攣:パーキンソン病、進行性核上性麻痺、脳梗塞 など

・薬剤性眼瞼痙攣:抗うつ薬、抗不安薬などの薬剤を長期間服用することで起こるもの

―――

2.眼瞼痙攣の治療

〇 治療法の第一選択は

ボツリヌス(BTX.)療法

・ 保険適用として認められている唯一の方法

→ 内服薬の有効率は低い

・ 施注に資格を要する

・ 高額

・ 生体由来の毒素製剤

――

 

BTX. 以外の治療

       経口薬

       知覚トリック(クラッチメガネ、テープ など)

       眼輪筋切除術

―――

 

 

3、治療を成功させるための診察のながれ

3,1診断にいたるながれ

――

◎随意瞬目テスト

・軽瞬:

前頭筋を使わずに(眉毛部分を動かさず)、

歯切れのよい瞬目をゆっくりとリズミカルに行う。

・速瞬:

できるだけ速くて軽い瞬目を10秒間行う。

・強瞬:

  強く閉瞼し、すばやく開瞼する動作を10行う。

――

運動症状の評価:

眼瞼痙攣調査質問表

随意瞬目テスト

感覚症状の評価

涙液検査:涙液の質と量の評価

涙液メニスカス

涙液破壊時間(BUT)

角膜上皮障害(SPK)の有無

シルマー試験

―――

◎本態性と薬剤性眼瞼痙攣に関する説明

脳内の糖代謝の変化を見れば両者は同じ現象と考えられる

       最近話題になり始めた外淡蒼球への「深部脳刺激電極埋設手術」は抑制性の神経伝達を加速させるものとも解釈できる

――

〇本態性眼瞼痙攣および薬剤性眼瞼痙攣における脳糖代謝変化

Glucose hypermetabolism in the thalamus of patients with drug-related blepharospasm Suzuki Y, kiyosawa M, Wakakura M et al., Neuroscience 2014

――

〇ベンゾジアゼピン系薬

・睡眠薬や抗不安薬として使用されている。脳内の中枢性ベンゾジアゼピン-GABAA 受容体に結合することにより神経細胞の興奮性が抑制される。

・ブロチゾラム、ジアゼパムなどが代表的である。

・チエノジアゼピン系薬のエチゾラム、非ベンゾジアゼピン系薬のゾルピデム酒石酸塩なども同様の作用機序である

――

③精神症状の評価 CES-D: 20の質問で60点中16点以上で 気分不快(うつ症)と判断

――

*片側顔面痙攣との鑑別診断

MRI画像診断>:眼瞼痙攣なら全例には行わない

・特に片側顔面痙攣では小脳動脈によるvascular compression がよく見つかる

micro-vascular で必ずしも decompression(ジャネッタ手術)の適応ではない

・ボトックス投与を優先的に進める

 

――

32診断から治療へ

BTX.の説明ポイント

・治療の機序:

眼輪筋に軽度の麻痺を起こさせることで症状を軽減させる対症療法であること(治す目的ではないこと)

・効果の一時性: 症状の軽減は薬の効果が持続している間の一時的なものであること

・効果の出方: 即効性はないが、1週間程度で効果が出始め3~4ヶ月の持続性があること(ただし、個人により差が大きいこと)

・個人差:効果には個人差が大きく、各患者の環境や精神状態などによっても左右される場合が多いこと

・副作用:効果が出すぎた場合の症状。ただし、主効果同様一時的なものなので、日にちが経過し効果が切れれば必ず治ること

・費用: 保険はきくが、高額であること

・実際の施注における注意:

1) 筋肉注射であるため痛いこと

2) 施注部位の出血

3) 施注後の皮下出血

・施注間隔:2ヶ月は間を開ける(保険請求上の要件)。それ以上は患者本人の選択で決定可能(眼瞼痙攣は3ヶ月、片側顔面痙攣6ヶ月程度)

◎同意書の取得後に処置(BTX.注射と涙点プラグ)

・診断と治療に理解が得られたら、BTX.施注に対する「同意書」を取得

・ドライアイ症状が強く、眼瞼痙攣による摩擦の軽減を図るべき症例では、涙点プラグによる治療の説明を加え、BTX.施注と併せて治療を実施する

 

――

33・治療の実際

BTX.施注の実際

・重症度と反応を診て、量を増減

50単位を 1.5ml に溶解し、眼瞼痙攣は総量 1.3 ml。片側顔面痙攣は総量 1.0ml、になる様に薬液量を調整。初期無効例: 20

〇実際の投与の図(片側顔面痙攣と眼瞼痙攣)

       30ゲージ針

       施注は考えずに素早くできるように慣れるべき

       止血する看護師を待機させる

       アイスパック冷却にて施注の痛みを減ずる

――

〇ドライアイ治療(涙点プラグ)

・ドライアイ症状が強く、眼瞼痙攣による摩擦の軽減を図るべき症例では、涙点プラグによる治療の説明を加え、BTX.施注と併せて治療を実施する

・涙点プラグと点眼により涙液を補う

・コラーゲンまたはシリコンプラグの使用がよい

・初回なら2ヶ月有効なコラーゲンプラグが無難

・数度になればシリコンプラグ希望者もいる

――

BTX. 以外の治療

       経口薬

       知覚トリック(クラッチメガネ、テープ など)

       眼輪筋切除術

       羞明や痛みへの対応

――

〇<経口薬の併用>

クロナゼパム、トリヘキシフェニジル塩酸塩の投与← 薬物依存に留意:薬剤性眼瞼痙攣の存在、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が原因(Suzuki, J Neuroophthalmol 2016

抑肝散加陳皮半夏も併用可能

――

〇<知覚トリックの利用>

・指を目尻にかける人がいる

・クラッチ眼鏡も有効

・水泳帽やバンダナ利用例も見る

・かずきテープ®もおそらくこの範疇で効く

――

〇<眼輪筋切除(兼 眼瞼挙筋短縮)術>

・重症例を最終手段として東京医科歯科大学形成外科に紹介し、本人希望なら実施

・一時的に満足するが、BTX.施注頻度は減じない

・表情が変わってしまうことに留意

――

〇<「眩しさ」「痛み」の治療>

Emoto H et al, Photophobia in EBS – a PET study. Mov. Disord. 2010

遮光眼鏡の処方:早期から考慮する

・レバミピド点眼も可能     鎮痛への配慮として

神経侵襲性疼痛だけでなく、神経障害性疼痛の可能性も考慮する

 

――

3-4:再診について

〇観察時期と施注スケジュール

・次回を告げるメモ

・施注2ヶ月以降であれば、次回の施注が可能

・施注による効果を含め、自分の症状について

自己観察してもらう:

症状の再燃に伴う施注の希望

前回施注効果との比較により、「施注箇所」、「施注量」増減の希望など。経験を重ねることで各自の症状について自分自身で把握してもらい、(ドライアイ治療を含めて)治療をカスタマイズする

・施注時期の客観的な判断には「随意瞬目テスト」を定期的におこない、若倉表の合計得点で評価する

――

4、 患者のニーズとその対応

〇<患者への接し方>

・積極的な働きかけ:精神症状が強い症例も多く、話を聞きなれた看護師、視能訓練士が丁寧に話を聞くことで、症状に対する理解と積極的な治療への参加を促す

・定期的な観察

・DMの検討

・目と心の健康相談室

・目と心の健康相談室の紹介:限られた医療の時間内では対応しきれない患者の悩みや相談の受け皿として設けられた外部法人機関を活用する

 

〇<患者のホープ・ニーズ>

・患者のニーズを把握するよう努める

・訴えの多くは「目の不快感」 BTX.の効果を含め、自分の症状について自己観察してもらう

施注時期や施注箇所についても、各自の症状に合わせて要望を取り入れ、積極的に治療に参加してもらう

・院内に話を聞く係を置くとなお良い

・眼瞼・片側顔面痙攣友の会への参加も勧める

 

――

5 . おわりに 本日のまとめ:Take home message

       患者の主訴から眼瞼痙攣を疑う

       若倉表で「〇」が3/10以上なら眼瞼痙攣とできる

       瞬目テストは殊に再投与の決定に使える

       ドライアイの合併には、点眼と涙点プラグを

       同意説明の内容と抑えるべきポイント

       経過観察の日程、再投与可能日も明示して帰す

――――

Categorised in: 眼瞼痙攣