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2016年10月1日

④「痙性斜頸」の発表:聴講印象録

④「痙性斜頸」 第2会場 13:20~16:30座長: 林明人 順天堂大学医学部附属浦安病院

S2-1 ボツリヌス毒素治療の始め方 -痙性斜頚の立場から- 大山彦光(順天堂医院大学脳神経外科)

S2-2 当科における初回ボツリヌス毒素治療の状況 盛島利文 青森県立はまなす医療療育センター 整形外科

S2-3 ボツリヌス毒素治療の始め方「痙性斜頸」 阿部 剛典 中村記念病院

S2-4 神経内科の一地方医師の痙性斜頸治療 高野誠一郎 福井赤十字病院神経内科

フロアからの印象的なコメント:高い薬品代にも拘わらず効果の持続は限られ、必ず再投与が必要になるというと患者の治療意欲も失わせるから、注射で脳の仕組みもリセットされるから効果は続くかもしれないという希望的な側面も強調して説明するのがよいだろうと。
座長から、首の回旋を伴う痙性斜頸には下頭斜筋への注射が有効との発言もあった。

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清澤の追記:上記記事に対する追加記事として「ジストニアに対するボツリヌス治療の適応と実際

ジストニアの診断とボツリヌス療法 – 日本神経学会

https://www.neurology-jp.org › Journal › public_pdf からの抜粋を引用し追記としておきます。願わくは原著をご参照ください。清澤は自分が痙性斜頸と診断した場合には、その治療を痙性斜頸治療を習熟した知り合いの神経内科に依頼しています。)

1.ジストニアに対するボツリヌスの適応

ボツリヌス治療では,随意運動を阻害する対立筋の過活動による,ジストニア放電を抑制することにより治療を行う.すなわち,ボツリヌス治療は,筋の過剰放電に基づく不随意運動を抑制し随意運動を円滑に行うようにする治療である.ボツリヌス治療対象は,局所性,分節性や多巣性などの局所ジストニアである.また,全身性ジストニアでも,局所的治療あるいは脳深部電極手術などの全身的治療との併用の場合に考慮される.しかし,中枢機序である周辺抑制の障害を直接的に治療するものでないため,ボツリヌス治療の限界が存在する.

2.痙性斜頸の症状と診断

本邦での局所性ジストニアで保険適応があるものは痙性斜頸と眼瞼痙攣である.神経内科領域で代表的なジストニア疾患である痙性斜頸について述べる.痙性斜頸では,回旋や側屈などの頭部偏倚の方向に常同性が見られ,また一定の動作で症状が発現する動作特異性が見られる.不随意に一定方向に頭部が偏倚していく(Fig. 5略).胸鎖乳突筋などの表在筋の腫大が見られることがある.また,手などを軽く顎に添えるだけで頭部偏倚の改善がする sensory trick が見られることがある.必要な検査は,表面筋電図検査,頸部筋 CT および鑑別診断のための脳脊髄 MRI である.表面筋電図の記録は,動作筋と対立筋を組み合わせ,安静時および動作時の記録を行う.Fig. 4(略) で示したように,筋放電の振幅の増加,放電時間 の延長や対立筋の放電が記録される.Van Gerpen らによれ ば,ジストニア放電は,

①安静時および緊張時にともに記録される,②筋放電振幅は,最大筋収縮時の 50%以上,③筋電図放電は,異常姿勢時に認められる場合をジストニア放電としている.筋CTや筋 MRIでは,頭部偏倚に対応した筋腫大が見られ診断の補助に有用である.右回旋,右側屈及び右肩挙上を示した痙性斜頸患者の頸部筋CTでは,左胸鎖乳突筋,右肩甲挙筋,斜角筋の腫大が見られた.筋 CT などにより痙性斜頸の責任筋などを判断することが出来る.

3.痙性斜頸のボツリヌス治療の実際 ボツリヌス治療のエキスパートによる実践的ガイダンス 3) では,治療に関する提言として,①痙性斜頸治療でのボツリヌス治療位置づけ,②治療の評価とゴールの設定,③治療開 始時の問題,④治療後の経過観察,⑤副作用の管理,⑥治療 無効例への対応を挙げている. 具体的には,

①痙性斜頸治療でのボツリヌス治療位置づけでは,痙性斜頸の治療の第一選択はボツリヌス治療である.ボツリヌス治療は,1985 年 Tsuiらの報告に始まり,その後 多くの二重盲検試験により有効性が検証された.A型ボツリヌスおよびB型ボツリヌス毒素は,痙性斜頸への治療成績はレベルAで,局所性ジストニアの治療法として,ジストニア症状の改善と痛みを改善する最も有効な治療法と評価されている1)~2).本邦のボツリヌス製剤は,A型毒素製剤Onabotulinum(ボトックス® )とB型毒素製剤 Rimabotulinum(ナーブロッ ク ® )の2種類がある.ボトックス®の保険適応は,眼瞼痙攣,片側顔面けいれん,痙性斜頸,小児脳性麻痺患者の下肢痙縮に伴う尖足,上肢痙縮,下肢痙縮である.ナーブロック®は痙性斜頸のみ保険適応がある.本邦で保険適応のあるジストニアは眼瞼痙攣および痙性斜頸である.

②治療の評価とゴールの設定では,重症度の主な評価はTsui scoreやTWISTAR(Toronto Western Spasmodic Torticollis Scale)を用いる.痙性斜頸の偏倚方向は,主に回旋,側屈,前屈,後屈,肩挙上及び頭部振戦である.前方偏倚,後方偏倚を合併することがある.痛みや社会的・日常生活への影響も評価する.ボツリヌス治療の効果は,通常 3~12日で発現し約3か月間持続する.治療効果の評価は,治療後3~4 週後が適切と考えられる.

③治療開始時の問題では,治療筋の決定と投与量である.正しい筋選択が治療成功の最も大事な点である.ボツリヌス治療時のガイド法として次の項で述 べる.

④治療後の経過観察は,ボツリヌス投与により,症状 の改善の程度などから正しい筋への施注が行い得たか,また追加するべき筋を検討する.次回投与は中和抗体産生を考慮 して,12週以上間隔をあける.しかし,最近の製剤は含有蛋白量が少なく症状改善が不十分な場合,保険適応に従い8週での再投与も可能である.

⑤副作用では,不適切な筋への投与によるボツリヌスの拡散が副作用を起こすことがある.副作用の多くは筋脱力で,痙性斜頸では嚥下障害,顔面筋では 眼瞼下垂が見られる.長期使用に伴う副作用報告は少ない. 臨床的に効果の減弱,使用量の増加などが見られた場合中和抗体産生を疑う.長期使用に伴う中和抗体産生は,A型1.2%と報告されている.

⑥治療無効例への対応は,primary nonresponderとsecondary non-responderに分けて検討する.Primary non-responder は初回治療より効果のない場合である.痙性斜頸の診断の誤りや,診断の誤りがない場合には,治療筋の選択の誤りや投与量の不足が考えられる.初回治療効果がない場合は,通常2から3 回の治療を行い判断する.Secondary non-responderは,以前の治療で効果があったが,突然治療効果がなくなる場合である.多くは中和抗体の産生が疑われる.前額部へのボツリヌス注射を行い前頭筋収縮が得られるかどうかを指標に中和抗体産生を調べる方法もある.他の重要 な効果減弱の原因は,治療筋の判断の誤りや投与量の不足によるものである.

4.ボツリヌス治療時のガイド法

ボツリヌス治療のためのガイド法には,①視診,触診など経験的・解剖的判断,②超音波エコーなどの画像を用いる方法と③筋電図などの生理学的方法がある.機器を用いず 触診などで行う場合,表面上の筋腫大や解剖学的判断により施注を行う.施術者の経験によるところが大きく,また深部筋へ正しく施注することは困難である.画像を用いる方法は,筋CTやMRI及びエコーガイド法である.エコーガイド法は,リアルタイムに筋,血管,神経などの構造物を把握でき,目標筋に正しく施注が可能であり,血管などを避けることが出来る点で安全性が高い.しかしながら,エコー上の筋腫大のみではジストニア筋であるか代償性肥大であるかの判断は困難である.また,ボツリヌス治療の継続後には,筋萎縮が起こるため,エコーガイドでは経過観察困難なことがある. 筋電図ガイドは,神経内科医に筋電図使用経験がある場合比較的容易に取り組める方法である.治療成績の向上と不要な筋への施注による筋脱力を予防するためである.Comella らは,筋電図ガイドにより治療成績の向上を報告している. 筋電図及び電気刺激装置を備えたポータブル筋電計は,ボツリヌス治療に有用である.筋電図ガイド下に,① passive monitoring でジストニア筋を同定する方法と,② active monitoringにより正しい筋の同定を行う方法の2種類がある. Passive monitoringでは,頸部の不随意運動に伴ってジストニ ア放電が記録される.ジストニア放電が最も大きく記録される部位で,ボツリヌスを施注する.一方 active monitoring は, 頭部などを回旋など一定の方向に動かすように指示を与え,刺入した筋の働きを評価し目的筋内への刺入を確認する方法である.ジストニア放電からジストニア筋であることを確認してボツリヌスの施注を行う.しかし,ジストニア筋に対し て,対立する正常筋の過活動に対して誤った選択をしないように注意を要する.

5.痙性斜頸に対するボツリヌス治療の成績

近畿大学医学部堺病院通院中の 1999 年 8 月より 2015 年 12 月までの特発性痙性斜頸 149 例を検討した.受診時年齢 55.5±16.1歳,平均罹病期間10.7±8.7年,男性 64名,女性 85名(男性比率 43%)であった.男女比は,本邦では Kessler らの報告では男女比1対1.2で女性が多いと考えられており,本研究と合致するデータであった.長期成績では,寛解: 症状がほぼ消失(Tsui 0から1 点)で,1年以上ボツリヌス治療なしで悪化しない場合を寛解とした.Fig. 7(略) に示すように, 寛解48例(32.4%),継続治療 33例(22.3%),自己中断39例(26.4%),転院18例(12.2%),無効5例(3.4%),悪性疾患などの他の疾患での死亡5例(3.4%)であった.罹病期間を検討すると,寛解症例 1.7±2.1 年,継続症例 4.4± 6.1 年,自己中断症例 4.5±6.8年と,寛解症例では優位に罹病期間が短く早期治療が重要であることが示された.Fig. 8(略)に罹病期間と治療予後を示した.罹病期間1年未満の症例70例中39例(55.7%)が寛解に至っている.主な副作用は,注射痛,軽度 の嚥下障害,後頸部筋力低下である.中止に至る症例はなく,経過観察にて改善する.臨床的に治療継続な困難な副作用は なく安全性は高かった.(引用終了)

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⑤「斜視」
座長: 根本 裕次 日本医科大学眼科
演者: 後関 利明 北里大学病院眼科
山上 明子 井上眼科病院
木村 亜紀子 兵庫医科大学眼科
清水 有紀子 ツカザキ病院眼科

⑥「眼瞼痙攣・片側顔面痙攣」
座長: 三村 治 兵庫医科大学神経眼科治療学
演者:

・高宮 清之 東邦大学医療センター大橋病院臨床検査医学研究室

・安部 洋一郎 NTT東日本関東病院ペインクリニック科
・清澤 源弘 清澤眼科医院
・野倉 一也 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院神経内科

Categorised in: 眼瞼痙攣