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2012年12月1日

3851 抗不安薬で眼瞼痙攣がおきるって本当ですか?(眼科ケア12月号記事です)

清澤のコメント:薬剤性眼瞼痙攣の解説です。(初稿は2012年で、2018.10.7改訂しました)

覚えておかなきゃ危ない! 眼科疾患に禁忌の他科の薬 ということで佐野研二先生がプランナーになり、私に書かせてくださった眼科ケア12月号95-96ページの「抗不安薬で眼瞼痙攣がおきるって本当ですか?」という記事です。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が眼瞼痙攣を起こすのです。処方している医師が知らないことも有りますが、その様な報告もたくさんあります。

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抗不安薬で眼瞼痙攣がおきるって本当ですか?

清澤源弘(清澤眼科医院院長)

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が眼瞼痙攣を起こす
 眼を開けているのがつらく、眼が自然に閉じてしまって、日常の生活に苦労する疾患に眼瞼痙攣というものがあります。図1はその様な患者さんを描いたイラストですが、眉間にしわを寄せ、まぶしそうに眼を細めています。場合によっては、この閉瞼のために歩行中に止っている自動車や電柱にぶつかったりするために外出できなくなったり、その表情を見られるのが嫌なために、人に合うのを控えたりすることもあります。
 その多くは中高年の女性に見られる原発性眼瞼痙攣と呼ばれるもので、その原因がわかって居ないものなのです。そのほかに精神に影響を与える様な薬剤を長期間服用している比較的年齢の若い患者さんに多くみられる薬剤性眼瞼痙攣というものが有ります。
 眼瞼痙攣を含む不随意な運動を示すジストニア系疾患は、眼の周囲ではなくて、脳の中枢に原因があると考えられています。神経精神科系薬の長期投与中に眼瞼痙攣を発症したという報告がいくつかあり、それらは、薬剤性眼瞼痙攣であると推測されています。

 私の医院では多くの眼瞼痙攣を持つ患者さんにボトックスをはじめとする治療を行っていますが、その初診の時にはボトックスを打つ前に全例にまばたきの検査をすると共に向精神薬を含む常用薬剤を聞いています。そうすると眼瞼痙攣の患者さんの3人に一人はその様な病歴を持っています

多くの報告が有ります
 調べてみますと、Mauriello らは、眼瞼痙攣患者を調べ、そのなかに眼瞼痙攣発症前から、抗うつ薬、抗精神病薬、抗ヒスタミン薬、抗パーキンソン病薬、または、これらを組み合せて服用していた患者がいたと報告しています。これらの薬剤の投与開始から眼瞼痙攣までの期間は、短い症例で2ヶ月、長い症例では35年とばらつきが大きかったそうです。井上眼科病院の若倉先生らは、254例の眼瞼痙攣患者の長期投与薬を調べ、35例でエチゾラム(商品名デパス)、53例で他の抗精神病薬が眼瞼痙攣発症前から投与されていたと報告しています。エチゾラム単独投与群における、エチゾラム投与開始から眼瞼痙攣発症までの期間は、28例で1年以上であり、13例で5年以上の長期であったそうです。原因薬の中止または変更によって、薬剤性眼瞼痙攣が軽快するかどうかについても調べていて、エチゾラム単独投与患者13例のうち9例を内服中止にしたところ、7例で眼瞼痙攣の改善傾向がみられたそうです。

 私たちも、以前に清澤眼科医院において経過観察されている、薬剤性眼瞼痙攣患者18例に処方されていた神経精神科系薬について調べてみました。ベンゾジアゼピン系睡眠・抗不安薬は、超短時間型、短時間型、中時間型、長時間型とさまざまな作用時間のものが、あわせて18例中17例にそれらが処方されていました。類似薬であるチエノジアゼピン系薬(エチゾラム)も5例に処方されていました。抗精神病薬・抗うつ薬が処方されていたものや、その他、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、気分安定薬が同時に投与されていたものもありました。

 ベンゾジアゼピン系薬は興奮を抑える働きがありますが、これを使いすぎると体の中でのバランスを保とうとして、眼筋の反射が促進され眼瞼痙攣が常に起きるようになってしまうと考えられています。不眠など他の疾患治療の目的でベンゾジアゼピン系薬を長期間投与していると、中枢性ベンゾジアゼピン受容体の減少に伴って基底核-視床-大脳皮質を含む錐体外路と呼ばれる運動調性経路の活性化を招き、眼瞼痙攣が発症すると推測されます。また、薬剤の影響で引き起こされた中枢性ベンゾジアゼピン受容体の減少は可逆的であると予想されるので、ベンゾジアゼピン系薬の中止によりこの薬剤性眼瞼痙攣の軽快が期待できるのです。しかし、実際には患者さんが既に薬剤に対する依存性を持ってしまっている場合も少なくはないので、必ずしもその薬剤からの離脱は容易ではありません。眼科医はボトックスで瞼の痙攣を抑えながら、精神科医との協力に依ってこれらの薬剤を減らしてゆくことが必要です。

 薬剤性眼瞼痙攣患者18例のうち全例で、ベンゾジアゼピン系またはチエノジアゼピン系薬が投与されていたことから、我々はベンゾジアゼピン系薬が薬剤性眼瞼痙攣の原因薬として重要であると考えています。

文献:
清澤源弘ほか、眼がしょぼしょぼしたら、、、眼瞼けいれん?片側顔面けいれん?正しい理解と最新の治療法、東京、メディカル・パブリケーションズ、2009、61p
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Categorised in: 眼瞼痙攣